グレイシー一族、ミルコ、アーツと戦った格闘家「引退してから輝けることもある」、セカンドキャリアで恩返し
第2の人生、格闘技界だけではない世界と繋がるきっかけに
――引退されてからはどのように過ごされていましたか?
大山:引退して、生まれて初めて目標を失ってしまいました。今までは物心ついた頃から格闘技をやっていて当たり前のように目標があったのに、先行き真っ暗になってしまいましたね。これからどうしようって思っている時に、とにかくいろんな人に会うようにしました。それで今の仕事「ファイトネス」のアイデアが浮かんできました。
――きっかけは何だったのでしょうか?
大山:2015年から従業員50人以上の事業所で従業員のストレスチェックが義務化されるという情報を知人から聞いて、「これだ」と思いました。引退していろんな人にお会いし、ストレスを抱えている人が多くなっているけれど、企業としてはどうしていいか分からないという話を聞いていました。僕は体を動かせば元気になると体験的に知っているので、自分の持っている運動プログラムを活用したらみんな元気に生活できるんじゃないかなと思ったんですよ。目標が決まった瞬間、今まで真っ暗だった景色が変わりましたね。目標って人生をこんなに豊かにするんだって嬉しかったです。目標が決まってからは早かったですね。あとはもう動くしかないと。
――格闘家からいきなりビジネスマン、経営者に転身。戸惑いはなかったですか?
大山:今まで営業なんてしたことがなかったですけど、自分でアポを取って、名刺交換して、プレゼンして、一人で何でもやりました。一般の方は僕のことなんて知らないので、格闘技をやっていた時の記事をコンビニに行ってコピーして、それを持って営業していましたね。プレゼンの資料なんかも酷いものでしたけど、パッションだけで営業していました(笑)。それでも採用してくれるところがあって、情熱って届くんだなって思いました。格闘技を取り入れた企業研修って今まで誰もやったことのない分野だったので、最初はとにかく実績が必要だと考えていました。情熱を持って提案して、実績をちゃんと詰めば、さらに多くの人が話を聞いてくれると思ったので、とにかく営業を頑張りましたね。始めた頃は必死すぎてゴリゴリすぎたこともありますが、今は相手にとって何が最適なのか、対話を大事にしています。ありがたいことに、今では100社以上でやらせてもらってきました。取材も来るようになりましたし、企業から依頼も来るようになりました。
――ファイトネスはどのようなプログラムなのでしょうか?
大山:格闘技を誰でもできる、遊び感覚で格闘技を味わえるようなプログラムにしました。企業の会議室とかでできる内容ですが、従業員同士一緒に体を動かし、同じ喜びを体験すると、仲間意識が芽生えるんですよ。僕のファイトネスは楽しいから、みんな笑って、喜びを共有することによってチームビルディングにもなりますし、体を動かしてストレス解消にもなる。それでいろいろな企業が取り入れてくれるようになりました。今はコロナの影響もありオンラインで行うことが多いです。
――今後のビジョンを教えてください
大山:今は引退した仲間のファイターや現役のファイターとかがサポートとして一緒にやってくれています。引退した選手はもちろんですが、現役の選手のセカンドキャリアにも役立てればと思ってやっています。現役中から格闘技界だけではない世界と繋がるきっかけになり、さらにファイトネスで繋がった縁でその選手のファンになってくれる人が増えてくれたら嬉しいですね。僕は現役中に「引退してからの人生の方が長いぞ」と言われていましたが、全く耳に入らなかったんですよ。夢中だったし、目の前の試合の方が大切だから。だけど引退して思うことは、第二の人生の方が圧倒的に長いなと。だからこそ、後輩たちには引退後「お先真っ暗」ということにはなって欲しくないので、ファイトネスを通して僕ができることはしたいと思っています。