「焦燥的な買い物」と言われ…”屈辱”と”飛躍”を味わった1年で遠藤航は何を得たのか 激動のシーズンを振り返る

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入団当初は懐疑的な目を向けられたものの、実力で信頼を勝ち取っていった(C)Getty Images

 昨年8月、遠藤航がシュツットガルトから推定移籍金2000万ユーロでリバプールへ移籍した時、現地のメディアやファンの反応は、控えめに言って、好意的なものばかりではなかった。一部のサポーターは「焦燥的に買ってしまった新戦力」と評し、ある日刊紙は「リバプールファンの気持ちを察する」と書いたように。

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 その理由はいくつかある。選手の高齢化に伴い、中盤を刷新しようとしていたリバプールは、7月にハンガリー代表ドミニク・ソボスライ(元ライプツィヒ)とアルゼンチン代表アレクシス・マカリステル(元ブライトン)を推定総額1億1200万ユーロを投じて迎えていた。そこに噂に上がっていたエクアドル代表モイゼス・カイセド(元ブライトン)を加えれば、これ以上ないほどの中盤が形成されると、多くのファンは期待していたが、チェルシーが推定移籍金1億1600万ユーロで獲得。その次善策として引き抜いたのが、遠藤だと考えられていたのだ。

 加えて、日本のサッカーファンなら誰もが知っている“ブンデスリーガのデュエル王”という事実も、イングランドのフットボールファンにはほとんど知られていなかった。つまり適切に評価されず、懐疑的な目を向けられていたわけだ。

 また当時、ソボスライは22歳、マカリステルは24歳、カイセドは21歳だったが、遠藤はすでに30歳。若手をターゲットにするクラブの補強ポリシーに反するものであり、世代交代にもならない。実際、ユルゲン・クロップ監督は三十路の日本代表MFを獲る際に、オーナーに直談判したという。

 さらにリバプールは夏の移籍期間最終日に、当時21歳のオランダ代表ライアン・フラフェンベルフを、推定移籍金4000万ユーロでバイエルン・ミュンヘンから獲得。カーティス・ジョーンズとハーヴィー・エリオットの生え抜きの若手コンビも名を連ねるなか、プレミアリーグに初挑戦する遠藤にとって、熾烈なポジション争いが幕を開けた。

 大方の予想通り、当初は主にカップ戦で起用され、リーグ戦では第11節まで先発の機会は一度だけ。しかもアンカーに配されていたのは、より前目を本職とするマカリステルだった。指揮官は「エンドウのことを何年も前から追っていた」と明かしたが──事実、当時のシュツットガルトにはクロップが率いた頃のドルトムントのチーフスカウトがおり、遠藤の話は頻繁に聞いていたはずだ──、実際に戦力として信頼を寄せるまでには時間を要した。

 しかしこれまでに所属したほとんどのチームで逆境を跳ね返してきた遠藤は、アンフィールドでも雌伏の時に、静かに爪を研いでいた。そしてチャンスが到来すると、両手でしかと掴んだ。

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