「どうあがいても長谷部誠にはなれない」――ロシアで知らしめた存在価値 ”稀代の主将”は日本代表にとってどんな男だったのか【コラム】

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ワールドカップ3大会でキャプテンを務めた長谷部。彼でなければ個性派が揃う日本代表はまとまらなかったかもしれない(C)Getty Images

 元日本代表のキャプテンでもあった長谷部誠が今シーズン限りでの現役引退を発表した。

 過去、日本代表のキャプテンとしてW杯を戦ったのは、4人しかいない。フランス大会の井原正巳、日韓大会、ドイツ大会の宮本恒靖、南アフリカ大会、ブラジル大会、ロシア大会の長谷部、カタール大会の吉田麻也だ。3大会でゲームキャプテンとキャプテンを務めた長谷部は、それぞれ難しいチームをハンドリングし、3大会中2大会でベスト16に導いた。結果を踏まえて考えると、長谷部は希代のキャプテンだったことが分かる。

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 長谷部がプレイヤーとして、またキャプテンとして注目されるようになったのは、南アフリカ大会の時だった。チームがうまく機能せず、大会直前の親善試合のイングランド戦前、システムと選手を大幅に入れ替え、ゲームキャプテンも中澤佑二から急遽、長谷部にバトンタッチされた。

 その時、長谷部は「ビックリした。キャプテンは誰がやっても変わらない。僕は特別なことはできない。ただ、キャプテンマークを巻いているだけ」と語り、「誰がやっても」という言葉で交代した中澤に気を使っていたのが印象的だった。

 細やかな気遣いは、それまでレギュラーだった選手がポジションを剥奪され、尖った空気の中でも発揮された。ダブルボランチを組んでいた遠藤保仁は「あまり良くない状況でキャプテンを任されてハセは大変だったと思う。監督のやろうとしたことを徹底し、ドイツ大会のようにバラバラにならないようにひとつになろうと声をかけ続けたハセがいたから結果を出せた」と語った。

 次のザッケロー二監督の政権下では、キャプテンの才、リーダーシップの素質があると認められ、「長谷部しかいない」とすぐにキャプテンに任命された。「W杯優勝」を宣言する本田圭佑をはじめ、香川真司、長友佑都、岡崎慎司ら個性の強い選手を泳がせながらもチームをまとめた長谷部を吉田は「このチームは長谷部さんがいるからまとまっている。前の選手とうしろの選手を繋ぐリンクになっているのでキャプテンとしてはもちろん、選手としても欠かせなかったです」と語った。攻撃の選手を束縛せず、一方でチーム戦術で尊守すべきことはどの選手にも要求する厳しさがあった。

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