日本人3人目の「9秒台ランナー」に仲間入りした『あの人』とは?飛躍の転機は?
転機は?
背中を追い続けてきた。北海道・立命館慶祥高時代は、出るレースでことごとく桐生に敗れて2位。慶大進学後はケガに苦しみ、伸び悩んだ。一方、東洋大に進んだ桐生はリオ五輪男子400メートルリレー銀、日本人初の9秒台まで出し、その差は開く一方。すし屋のアルバイトで遠征費を稼ぎ、就職活動中は一時引退も考えたほどだという。
転機は17年夏から84年ロサンゼルス五輪走り幅跳び7位の臼井淳一氏(61)に師事したこと。力任せの、がむしゃら走法をやめ、6割程度の力で走る練習を取り入れ、正しいフォームを体に染み込ませた。昨年夏のアジア大会で200メートル優勝で頭角を現すと、今年は100メートルでも自己記録を次々と塗り替える。昨年10秒17のタイムが、今年5月のセイコー・ゴールデングランプリ大阪で10秒04まで伸び、今回は0秒06更新して一気に9秒台という急成長ぶりだ。
小池を指導する臼井コーチは「スタートからの動きなど、練習でやったことが丁寧にできている。まぐれで10秒を切れたわけじゃない。一度、10秒を切っておけば他の選手も覚えてくれるし、(走りも)再現できる」
100メートル元日本記録保持者の青戸慎司氏は小池の走りに「体のゴツさがあって、筋量とパワーが備わり、技術とタイミングがかみ合っている。スタートが強いジャマイカや米国選手に重なる姿だった。決して長身ではない(173センチ)小池君が9秒台で走ったのは、日本人選手みんなに希望を与えた。努力すれば9秒台で走ることができる。そう思わせてくれたことに、ものすごく意義がある」
17年に桐生、今年に入ってサニブラウン・ハキーム(20)と小池の3人が9秒台に突入。日本人にとって長く鬼門だった「10秒の壁」はなくなり、通過点としてクリアする若手がどんどん出てくるだろう。東京五輪400メートルリレーで金メダルを狙う日本短距離界に、追い風が吹いている。
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[文/構成:ココカラネクスト編集部]