【スポーツメンタル】”生理移動”、ピルの活用で女性アスリート”悩みの種”を解決
生理時の”メンタルコンディション”
”腹痛、頭痛、そしてメンタル面の不調を感じる女性が多いのが生理の時期。特にメンタル面では「生理が試合に重ならないか不安」「生理周期による好不調を意識してしまう」「生理周期にトレーニング内容を変える必要がある」「生理出血による貧血の心配がある」と生理を”必要悪”のように捉える傾向にあるのが現状です。
生理がきちんとくる”女の体”になってしまっては競技力が下がってしまうと考える指導者も多いと言われています。思春期から成熟期の女性にとって排卵があり生理があることは将来的に子供を望む際に必要な事であるのに、”無月経の方がマシ”と誤った観念を助長することになってしまいかねません。それほど生理がコンディションに及ぼす影響は大きいのです。
85%の女性アスリートが、生理周期に伴いコンディションに変化があると自覚しているそうです。その中でもコンディションが良い時期として一番多かったのが”生理終了直後から数日”。黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌される時期には、月経前症候群(PMS)を感じる人が多いです。倦怠感、むくみ、体重増加、乳房豊満感、気分変調などの不調。また生理中には、生理痛を感じる人も多いです。
生理周期による身体の不調の改善方法として痛み止めを服用する他にも”生活のリズムを整えること”や”アロマテラピー”などで気持ちをリラックスさせる方法があり、実践している人も多いです。また、”ツボを押すこと”や”体を温めること”そして”食事を意識すること”で緩和を望めます。
しかし近年、試合中に生理の時期を避ける=生理移動させることがコンディション調整の手段として活用されています。海外では既に常識的にも考えられている生理移動。ところが日本のトップアスリートの66%が「コンディション調整のために生理移動という手段があるなんて”考えたこともなかった”」と話しています。
この”生理移動”のメリットは、単に生理が試合に当たるのを避けるためだけではなく、そのスポーツ選手個人のコンディションが良いと感じる時期に逆算して合わせることも可能になることなのです。
”低用量ピル(OC)”による生理移動
日本のスポーツ選手にまだ浸透していないコンディション調整のための手段である生理移動。使用される低用量ピル(OC)ですが、初めてこの薬剤を利用した人は、悪心や体重増加などの症状を感じた人もいるそうです。そのため内服期間中に試合を迎えるのではなく、試合前には低用量ピルの服用を終了するという余裕を持つことがオススメ。
例えば、前の生理3日以内に低用量ピルを開始し試合の1週間前に服用を終了します。すると出血の終了後に試合を迎えることができるのです。また試合に関わらず、重い生理痛や月経前症候群(PMS)に日常的に悩まされているのであれば低用量ピルの定期内服への移行を試すこともできます。
女性アスリートの低用量ピルによるコンディション調整。海外では既に活用している選手も多いですが、日本のトップアスリートはわずか2%に満たないと言われています。
しかし近年では、テニスや自転車競技など海外で活躍するスポーツ選手の低用量ピル服用者が増えつつあります。多くの人に知ってもらうことで生理周期によるコンディション影響にばらつきがなくなり、よりパフォーマンスの向上が期待できることは間違いありません。もちろん選択肢の一つではありますが、あらゆる情報を知っておくことが重要だと考えています。
今回は、悩む女性アスリートが多い”生理”についてお話しました。女性として”子供を産むため”に大切な身体の仕組みであるものの、スポーツ選手として考えるとパーフォーマンスに影響する生理は”悩みの種”。身体の不調を感じることでメンタルも大きく左右されてしまうため、指導者や選手自身も生理を”必要ないもの”と感じてしまいかねません。
しかし、生理がどんなもので年齢によって女性の体がどう変化していくのかを男性の指導者やスタッフが理解してくれることで女性アスリートも心強く感じることができます。また日本で浸透していない”生理移動”という手段。十分に理解したうえで上手く活用すれば、試合など一番大切な時期に向けてコンデションを調整することができます。
今後もスポーツ選手にとって有益な情報を発信し続けていきたいと思います。
[文:スポーツメンタルコーチ鈴木颯人のメンタルコラム]
※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。
【関連記事】【スポーツメンタル】プレッシャーに強くなる!イメージトレーニングの正しい行い方とは?
【関連記事】【スポーツメンタル】エゴサしても意味はない…知っているけどエゴサしてしまう心理
【関連記事】「たまたま出た結果」をスポーツメンタルコーチはどう捉えるか?
一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会
代表理事 鈴木颯人
1983年、イギリス生まれの東京育ち。7歳から野球を始め、高校は強豪校にスポーツ推薦で入学するも、結果を出せず挫折。大学卒業後の社会人生活では、多忙から心と体のバランスを崩し、休職を経験。
こうした生い立ちをもとに、脳と心の仕組みを学び、勝負所で力を発揮させるメソッド、スポーツメンタルコーチングを提唱。
プロアマ・有名無名を問わず、多くの競技のスポーツ選手のパフォーマンスを劇的にアップさせている。世界チャンピオン9名、全日本チャンピオン13名、ドラフト指名4名など実績多数。
アスリート以外にも、スポーツをがんばる子どもを持つ親御さんや指導者、先生を対象にした『1人で頑張る方を支えるオンラインコミュニティ・Space』を主催、運営。
『弱いメンタルに劇的に効くアスリートの言葉』『モチベーションを劇的に引き出す究極のメンタルコーチ術』など著書8冊累計10万部。