トップアスリートに学ぶ「心のマネジメント術」 ~心技体のバランスとは~
1番危ないのは「必ず自分はそこにいける」と、そこばかり見ている時
塚越 アスリートの方は結果を残すためにも、先を見通して自信を持つことでパフォーマンスにつなげるという方もいらっしゃるかと思います。だけど、一部分としては先を見すぎて、今をフォーカスしないと足元をすくわれるということがあるんですね。
藤田 なんか、先ばかり見てしまうと、今の自分を見失うというか、先の目標ばかりを見てしまって、今の自分を疎かにしてしまったというのが16年時の反省ですね。ただ、今思うとそれが幸運なのかなと思います。代表落選して、そのことに気づかせてもらったので。自分の中では人生最大の挫折と言っているんですが、そこから1日1日を積み重ねるというマインドセットもできるようになりました。プレーもよくなりましたし、日に日に自分に身に付いていっているものが感じられました。逆に自信をつけて、試合やセレクションに臨めたことはありますね。
塚越 先ばかり見ていると今の調子というものを客観的に見えなくなってしまう。
藤田 過去を振り返ると「終わり良ければ全て良し」じゃないですけど、結果だけ良ければいいやみたいになっていて。そこまでのプロセスが全然充実できていなかったなというのが反省としてすごくありますね。
塚越 アスリートの方は日々自分の調子や結果を振り返る方法としてノートを書いたりなどの記録をつけたりすることもあるかと。そんな中で先ばかり見て今の自分が見えなくなるというのは、どんな心理が働くのでしょうか?
藤田 やっぱりこう、目指すものが大きかったりとか、必ず自分がそこにいけると思っていて、そこばっかり見ている時が、自分の中では1番危ないと思っています。そういう時こそ足元をすくわれるんじゃないかなと自分の経験から言えるのかなと思います。例えば、家を建てる時も、土台から建てるじゃないですか。そういうイメージでスポーツも、準備をやっていかないといけないんじゃないかなと思いますね。
塚越 それは、先の目標が大きいと、そっちの方に目が向きやすいということなんですか?
藤田 そうなのかなって思っちゃいますね。人って、欲しいものがあるとそこを追ってしまうというか。心理的な面はよくわからないんですが、そういうことなのかなと思いますね。
(続く第2回では結果を出すための「心の整え方」について、さらに深く掘り下げます)
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。
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塚越友子(つかこし・ともこ)
過去に自身で仕事中にうつ病を発症した経緯から、働く人のカウンセリングに注目。2008年に東京中央カウンセリングを開業。社会学修士号(社会心理学)教育学修士号(臨床心理学)。公認心理師・臨床心理士・産業カウンセラー。
藤田慶和(ふじた・よしかず)
ラグビースクールの監督をしていた父の勧めで7歳から競技生活をスタート。名門・東福岡高校時代に頭角を現すと全国高校ラグビーで主力として3連覇を果たす。2015年ラグビーW杯ではチーム最年少出場、今夏の東京五輪では7人制ラグビー日本代表として戦った。埼玉パナソニックワイルドナイツ所属。