まさに緩急を駆使した投球で異彩を放ったサトリア(C)Getty Images
「今、プロ契約のオファーがあっても引退する?」と問われたサトリアは…
4シームの最速は78.1マイル(約125.6キロ)。投手が当たり前に100マイル(約160.9キロ)を超える快速球を投げるようになって久しい昨今の野球界にあって、チェコの“小さな巨人”のボールは、言うまでもなく遅い。しかし、平均でも72.4マイル(約116.5キロ)だった右腕の小気味よい投球を前に、強力な日本代表打線は翻弄された。
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3月10日に行われたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)1次ラウンドC組の最終戦で野球日本代表「侍ジャパン」と対戦したチェコは、0-9で完敗。大会を4戦全敗で終える形となったが、この試合では先発したオンジェイ・サトリアが4回2/3(67球)を投げ、被安打6、無失点と粘投。大会前から決断していた現役ラストマウンドをこれ以上にない形で締めくくった。
体躯も175センチ、76キロと決して大柄ではない。しかし、マウンド上に立ったサトリアのボールに、日本の打者たちは手を焼いた。ボールは、冒頭の78.1マイル。お世辞にも速いとは言い難い。実際、この日に侍ジャパンの先発マウンドに立った高橋宏斗の最速は95.7マイル(約154キロ)と、その差は歴然だった。
それでも投球の7割を占めたチェンジアップとシンカーを主体とした投球で、相手打線に的を絞らせず。目が慣れず、ことごとくタイミングのズレたスイングを強いられていた。
まさに妙技と言える技巧派らしい投球だった。試合後にはSNS上でその名は話題沸騰となり、Xでは「サトリア」がトレンド入り。一部の野球ファンからは「日本で投げたらいいのに」とNPB入りを求める声も上がった。それほど29歳の駆け引きありきの投球は、見る人々の胸を打ったと言えよう。
もっとも、当人は至って冷静だ。チェコ野球連盟の公式サイトで「今、プロ契約のオファーがあったとしても引退する?」と問われたサトリアは、「そんなこと起こらないよ(笑)。いや、やりたくない。そういう声は本当にうれしいし、ありがたい。でも、野球の広告にはなったけど、どこにも行かないよ。僕は仕事に行くよ」と強調。改めて引退の意志を明らかにしている。