先進不妊治療への助成が始まった今、改めて知っておきたい妊活術

タグ: , , 2023/3/29

ビタミンD濃度と不妊治療成績の関連性

■ビタミンD充足群は着床率・妊娠率・出生率がすべて上昇

イギリスで2019年、体外受精や顕微授精など生殖補助医療(ART)の治療結果とビタミンDとの関連を調査した 論文が発表されました(※1)。この論文の中で、体外受精を受けた500名の女性を血中ビタミンD濃度により 3 群 (血中 25(OH)D 濃度が 20ng/ml 未満をビタミンD「欠乏群」、21-29ng/ml を「不足群」、30ng/ml 以上を「充足群」と日本内分泌学会の指針とほぼ同じ区分)に分け、臨床成績を比較しました。

ビタミンDと生殖補助医療(ART)の結果

今回の研究に際し、対象者のビタミンD状態を見てみると、欠乏群は53.2%、不足群は30.8%と全体の 84%にも上り、ビタミンDが充足状態にある群はわずか 16%と少ない状況でした。ビタミンDの背景に相関して、出生率を比較してみると、ビタミンD欠乏群、不足群、および充足群ではそれぞれ 23.2%、27.0%、および 37.7%という結果が明らかになりました。着床率や妊娠率に関しても同様に、ビタミンD充足群がそれぞれ最も高い成績(48.1%、41.6%)を示し、欠乏群の成績を15ポイント以上も上回るなど、3グループ間で統計的に有意な差が検出されました。この結果は、ビタミンDの酵素と受容体が子宮内膜で発見されていることから、受精卵の着床にはビタミンDが重要な役割をしていると考えられています。さらに、流産率も充足群が最も低い結果となり、血中ビタミンD濃度の状態と妊娠および出産の可能性との間に関連性が見られました。また、ビタミンD欠乏状態では、子宮内膜症や多嚢胞卵巣症候群など不妊症の原因となる疾患リスクが高まるという報告もあります(※2)。

※1 Justin Chu Reprod Health.2019; 16: 106.
※2 Chu J, Gallos I, Coomarasamy A. et al. Hum Reprod. 2018;33(1):65-80.
※3 上記論文の研究結果に関しては、介入試験も必要だと言われています。

■ビタミンDとは ・・・ 免疫機能を高め、健康な骨を維持するために欠かせない注目のビタミン

ビタミン D は腸管からカルシウムやリンの吸収を促進する作用や骨の成長を促す作用など重要な働きをもつ脂溶性のビタミンです。さらに、ウイルスや細菌などの感染を予防する作用も確認されて、免疫機能を高める作用が注目されています。最近の報告では新型コロナウイルス感染リスクを低下させる効果も医学論文で報告されています。

<監修者:田中清先生のコメント>

食生活や生活様式の変化によって、多くの日本人において、ビタミン D が不足しています。ビタミン D の不足は、骨粗鬆症、妊娠率の低下だけでなく、生活習慣病のリスク、免疫力低下など、非常に多くの病気と関わることが、明らかになっています。

今できる正しい妊活術とは

■ビタミンDが豊富な“サケなどの魚やキノコ”などの食材を使った食事を

乳児の体内ビタミンD量は母親のビタミンD量によって決まります。特に、妊娠中期の母親のビタミンD量は新生児の成長に関係するため、不足しないように注意が必要です。ビタミンDは魚やきのこ類、卵黄などに多く含まれます。脂溶性のビタミンDは熱に強いという特徴があるので、炒め物や揚げ物など油を使う料理でより効率的に摂取できるようになります。

<可食部 100g 当たりの含有量>出典:日本食品標準成分表 2020 年版(8 訂)

■ビタミンD以外に葉酸や鉄分など不足しがちな栄養素の摂取も心がけましょう

プレコンセプションケアの観点からもヘルスリテラシーは重要とされています。ビタミン D 摂取が不妊治療に有効であることに加えて、胎児の先天異常である神経管閉鎖障がいの予防のために葉酸※1 を摂取したり、胎児の発育を促した、また母親の産後うつを防ぐための鉄分摂取などを意識した食生活を心がけましょう。

参考:
厚生労働省「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針~妊娠前から、健康なからだづくりを~
「産後うつに貧血が関係? 国立成育医療研究センターが新知見を報告」小川 浩平(国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター産科), 前田 裕斗, 左合 治彦/ペリネイタルケア(0910-8718)40 巻 9 号 Page906-910(2021.09)
※1 厚生労働省「食事摂取基準 2020 年版」:通常の食品以外の食品に含まれる葉酸(狭義の葉酸)

<監修者:田中清先生のコメント>

最近の母乳は、以前の母乳と比べて、ビタミンD含量が低下していることが明らかになりました。また近年、くる病(小児のビタミンD欠乏症)が増えています。妊活中だけでなく、赤ちゃんのためにも、妊娠中も積極的にビタミンDを摂取しましょう。つわりなどで、食事からの摂取が困難な場合は、サプリメントの活用も有効です。
また、日本人の食事摂取基準における、18~29 歳の月経なしの女性に対する鉄の推奨量は 6.5mg/日ですが、妊娠中期以降は、さらに+9.5mg/日の付加量が定められています。若年女性は、妊娠前から鉄欠乏性貧血者の割合が高いので、一層要注意です。そして、神経管閉鎖障害予防のためには、妊娠ごく初期の葉酸栄養状態が重要で、400μg/日の狭義の(サプリメントに含まれる)葉酸摂取が勧められています。一方それとは別に、胎児の発育に伴って葉酸の必要量が増加し、18~29 歳の女性に対する葉酸(こちらは食事性葉酸)の推奨量は 240μg/日ですが、妊娠中期以降は付加量 240μg/日が加わり、必要摂取量が倍になります。鉄や葉酸をこれだけ摂取するのは容易ではないので、サプリメントで補うこともご考慮ください。各種栄養素の摂取量が心配な方は専門家に相談することをお勧めします。





※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

<監修者プロフィール>神戸学院大学 栄養学部 教授 田中清(たなか きよし)先生

田中清

■所属
神戸学院大学 栄養学部 教授

■所属学会
・日本病態栄養学会(学術評議員)
・日本ビタミン学会(理事)
・脂溶性ビタミン研究委員会(委員)
・ビタミン B 研究委員会(参与)
・日本栄養学教育学会(理事)
・日本栄養改善学会(評議員)
・日本骨粗鬆症学会(評議員)

■主な職歴
・1977 年 :京都大学医学部卒業
・1977~1979 :天理よろづ相談所病院 内科系研修医
・1983 :京都大学医学部附属病院 医員
・1984 :天理よろづ相談所病院 内分泌内科医員
・1984~1986 :米国オレゴン大学医学部内分泌内科 Research Associate
・1986~1990 :静岡県立総合病院 核医学科・内分泌内科 副医長
(1988 医長)
・1990~2000 :京都大学放射性同位元素総合センター・京大病院 助手
・2000~2004 :甲子園大学栄養学部 教授
・2004~2018 :京都女子大学家政学部食物栄養学科 教授
・2018~ :神戸学院大学栄養学部 教授

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