「他の選手とは全然違う」井上尚弥は“減量”の上手さも別格!カラダづくりを支える管理栄養士が感じたモンスターの進化
「やっぱり計量をクリアする事だけにフォーカスして、栄養を考えずに食べない・飲まないという無理のある減量では厳しいですね。私もこれまで多くのボクサーの様子を近くで見させてもらって、計量にも立ち会っていますが、中には適正階級で試合を組めていないと感じる選手もいました。そういう選手は、絶食絶飲で何とか体重を落とせても、その後の最後の1日でうまく体重を戻すことができずコンディションを崩しやすいです」
「減量が凄くきついと、計量が終わった後の食事でリバウンドがきます。解放感というか、そこまでのストレスとしんどさで、急激に水分をカラダの中に入れようとするんです。ただ、カラダがそれを受け付けない状態になっていますから、無理やり飲んで食べて体重を戻そうとしても、逆に気持ち悪くなって、もどしてしまう選手もいます」
「実際に井上選手の対戦相手にも、そうした選手がいました。短期間で急激に水分を抜く減量方法をとり直前まで体重調整に苦戦していた結果、計量の時間に1時間も遅れで到着。瞳孔が開き目の焦点もあっていないような状況で自力では歩けずスタッフに支えられながら計量会場に向かうという危険な状態でした。なんとか計量をパスした直後、ドリンクを一気飲みしていましたが、その後の調整が大変だったと聞いています。一方、井上選手はその様子に怒りを感じながらも至って冷静に、いつも通りゆっくり時間をかけながら水分や糖質の補給を行うことができました。その様子からも『明日は絶対勝てる』という自信を感じました」
自分のカラダを理解することの難しさは、プロであっても変わらない。しかし、井上は減量だけでなく、試合までの調整の上手さも備わっていると村野さんは言う。
「そういった選手と比べると井上選手はまったく違います。本当に調整が上手です。計量がゴールではなく、リングに立って試合が終わるところまで全てを計算しながら、トータルのコンディショニングができています。そのあたりは、この8年間で本当に進化していると感じます」
長年支え続ける村野さんの目から見ても、井上の進化スピードはすさまじいようだ。次戦でもさらに強くなった“モンスター”が、我々を驚かせてくれるに違いない。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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