焼き肉屋でのバイトから見つけたトレーナーの極意 ～阪神・岩田稔の個人トレーナーが語る５～
阪神タイガース・岩田稔投手と二人三脚で支えるパーソナルトレーナーの網川翼さん。
前回までは、トレーナーになるキッカケ、岩田投手と語り合っている野球の技術論の話を語って頂きましたが、今回は「トレーナー業のやりがいや選手のモチベーション」について語っていただきました。
焼肉屋でのバイトから見つけたトレーナーの極意
岩田投手と一緒に取り組んでいて、「やってあげたらこれだけの結果が出る」、「こういうビジョンで、こういう風に乗っかれば、こういう風になる」というのが一致し出してから、この仕事の楽しさが分かってきた気がします。すなわち、自分がやった結果が出て、本人が納得してくれた時に、楽しさが湧いてきたんです。
今の仕事を一言で例えるなら「共同作業」ですね。結局は本人のオーダーに沿ってあげるというのがベストです。今の仕事の経験は飲食でのアルバイトがあるからです。大きく括るとどちらもサービス業なので。
僕が焼肉屋で働いている時によくバイトリーダーに怒られたのは、「締めを食べ終わった後に、何でおしぼりを替えないの？『おしぼりを替えください』と言われてから、替えるのは作業員でしょ。サービス業は言われる前にやるのがサービスなんだよ。お前は作業員なの？」と。それはトレーナー業にも通ずるところで、「本人が気づいていないところを気づかせてあげる。」これが僕の中で一番大事にしているところです。
どんな仕事でも、過去の競技の経験をどう活かすか。いま自分が競輪選手にならなくて良かったなと思えるのも、過去の経験が活かせているからだと思います。
選手のモチベーションを上げるためには
自分は野球の競技経験は無いのですが、3年前から岩田投手のキャッチボール相手をするようになりました。見て分かる部分もあれば、見えていない部分、ボールの押し込みの感じだったり、タイミングだったり、ボールに体重を乗せきっているか、だったり。それを感じるには、ボールを捕ったほうが良いよな、と。
そうしたら、野球の練習しないといけない(笑)
最初は取れないし、手はパンパンになるし、何度も身体に当たるし…。
彼もプロだから、厳しくて。低めのボールをグローブで追いかけたら、ビシってミットを止める動作をしながら「今のはこう！」って、めっちゃ言ってくるんです(苦笑)。
僕もYoutube見て、谷繁さんの捕り方や、古田さんの捕り方を研究しています。35歳まわってから、こんなに野球を、というかキャッチングを練習するなんて思ってもいなかったですから。現役時代よりも練習しているんじゃないかなって(笑)
最初は捕る事だけに必死だからフォームを見る余裕はなかったですが、だんだん捕れるようになってきて、捕った感じと、動きの感じとを擦り合せはしやすくなりました。体のコントロールを、動きの指示の部分ができるようになりました。本人も投げた感じで「これはOK、これはダメだ」というのが分かるようになりました。
今までは自分の指のかかりやキャッチングポイントだけで調子良い、悪いを判断していたんですが、それが「これでもええんやって」、その「ええんや」の幅が広がっていると思います。
モチベーションを上げるというよりは気持ちをラクにしてあげられているのかな、と。こっちが受けるキャッチと向こうが投げやすいと思う感覚が近づいています。
※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
網川 翼(あみかわ・つばさ)
つばさ鍼灸整骨院代表/ 岩田稔パーソナルトレーナー
幼少の頃より自転車競技やトライアスロンなどスポーツに親しみ、一時はプロ競輪選手の道を志すもアスリートを影で支えるコンディショニングに興味を持ち、トレーナーの世界に入る。
自身がスポーツ経験者であることで競技者の心理に寄り添ったコンディショニングが評判を呼び、2013年よりプロ野球選手・岩田稔選手(阪神)とパーソナルトレーナー契約を結ぶ。 家庭では4児の父。
http://t2room.com/
