元メジャーリーガー・大塚晶文から学んだ「コンディショニング=生きることすべて 」

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登板する10分間のために24時間を逆算して活動する


 「J.T. STRENGTH & CONDITIONING代表」の代表取締役社長として活動しているJ.T.(高橋純一)と申します。今回は私がメジャーリーグのサンディエゴ・パドレスで通訳兼コンディショニング補佐をしていた時に通訳を担当した大塚晶文投手(現中日派遣コーチ)についてお話させて頂きます。

 大塚さんとの出会いは03年オフ。トレーニングにおいて、日本では「コンディショニング」を「整える」ための作業と連想しますが、決してそれだけではありません。異国の地でストレスなく過ごし、高いパフォーマンスを発揮するためには、グラウンド以外で過ごす時間が重要です。パドレスのキャンプ地、アリゾナ州ピオリアで春季キャンプが行われましたが、私は毎朝5時に起床して朝食を作り、昼食は補食を用意。夜も栄養を考えた料理を作っていました。

 当時、日本食を売っている店、レストランは多くありません。夜中に郊外の店に買い出しに行くこともあり、睡眠は3、4時間が日常でした。キャンプ前にはサンディエゴで大塚さんの住居探し、銀行口座開設など生活の立ち上げ、キャンプが終わると大塚さんの家族のサポート。そして、練習メニューやフロント、首脳陣、チームメイトのコミュニケーションといかにストレスなく、環境に溶け込みプレーできるよう毎日必死でした。

 大塚さんに身近で接して感じたのはプロ意識の高さです。試合に登板するまでの練習、生活で行うルーティンがきっちりしていて軸がぶれません。米国でも積極的にチームに溶け込みつつも、自分の強化したいポイントを首脳陣、フロントにしっかり主張していました。球場に入る時間、試合でブルペンに入るタイミング、球数はまったく変わりません。グラウンドを離れても、遠征地にサトウのごはん、インスタントみそ汁の補食セットは欠かさず持っていきました。この年はメジャーで日本人選手シーズン最多記録の73試合に登板。リーグ最多の34ホールド、防御率1.75と抜群の安定感でチームの信頼を得ました。私もサポートさせて頂き、人生の財産になる一年間でした。

 大塚さんが試合で救援登板する時間は10分に満たない時もあります。でもその10分間で力を発揮するため、24時間を逆算して活動します。私の現在の理念の根底にある「コンディショニング=生きることすべて」は大塚さんから学びました。この意識はプロ野球の世界で活動していない人も参考になるのではないでしょうか。トレーニングで自分を追い込むだけでは十分ではありません。日本はこの「心を満たす」作業が重視されていないように感じます。会社でうつ病を発症する社員が出るのも心身のバランスが崩れているから。おいしい食事、趣味の時間でストレスを解消して心を満たすことも「コンディショニング」なのです。

■編集部からのお知らせ
3月7日に発売の雑誌「CoCoKARAnext」では読売ジャイアンツ・菅野智之投手のインタビューの他、プロ野球選手に学ぶ仕事術などストレスフルな時期を乗り越える情報を掲載。

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません

[文/構成:ココカラネクスト編集部 平尾類]

高橋 純一(たかはし・じゅんいち)

高橋 純一

MLBサンディエゴパドレスで通訳兼コンディショニング補佐を務めた後、千葉ロッテマリーンズ、ヤクルトスワローズ、DeNAベイスターズファーム等でチーフトレーナーとして活動。17年より独立。幅広いストレングス&コンディショニング領域をアレンジ、シンプル化させ、「俺、最高。」「やってみるをかなえる。」をキーワードに老若男女問わず、自分の肉体の可能性を高め、向上していくサポートを行う。コーポレートコンディショニングという企業のトレーニング意識を変えるコーチングも担う。

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