ストレスを乗り越える仕事術vol.5 クリケッター・木村昇吾 「人生に失敗はないと思う」

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今まで決断したことも何一つ後悔はない。やらないで後悔するならやる方を選ぶ


 プロ野球からクリケッターへ。史上初の転身で海外のプロリーグを目指す木村昇吾はストレスという言葉に対しての考えを口にした。「僕の座右の銘は『心が体を動かす』。何でも病は気からだと思う。昔はストレスという言葉はなかったと思う。現代病みたいなもの。人間関係とか色々あるしね。対処法は一概には言えないけど…」と言葉を選びながら、自身のメンタル術を明かしてくれた。「嫌なことは当然ある。そういう気持ちのラインが下向きの時は沈み切ったほうがいいと思う。あとは上がるだけだから。中途半端な位置で気持ちが下向きのままだったら、なかなか上向きになれない。その日にとことん落ち込んで寝たら、もう次の日は切り替える。あと不平不満は口に出さない。自分が他の人を見ているように他の人にも見られている。どう立ち振る舞うか。そこは大事やと思う」

 木村はプロ15年間で3球団を渡り歩いている。トレード、FAでテスト入団と時として思い描いた形ではなかったかもしれないが、「周囲の人たちに恵まれた」とはっきり言う。環境が変わり、人間関係も再構築する。その度に相手の感情の機微を読みとる能力が養われたのかもしれない。「嫌だなと思ったとして人もその人の一部分を切り取っただけだから。自分が嫌いになれば相手も嫌いになる。みんなに好かれる人は嫌味な言い方をしない。周りに好かれる人の話し方、仕草をよく見て勉強はしている」と語った。

 ストレスを感じることで心身が不調をきたし、思い描いた理想と現実のギャップに苦しむ。ただ人生は自分が目指した山の頂上でなくても何度も軌道修正してやり直せる。紆余曲折を経てクリケッターに転身した人生は象徴的だ。「人生に失敗はないと思うんです。何が失敗か成功か突き詰めたらわからない。クイズ番組は正解が〇、×がつくけど人生の成功、失敗はわからない。傍から見れば失敗かもしれないけど。自分のやろうとしていることを覚悟を決めてやれたんだったら目指したゴールでなくても、何らかの道に到達する。次に生かす改善点が出てくる時点で失敗ではないと思う」

 つい数か月前まで野球に全身全霊をかけて打ち込んでいた。西武を退団後に12球団合同トライアウトも受験して野球で現役続行の道を模索したが叶わなかった。だが、道は行き止まりではなかった。「クリケットをやるなんて想像もしていなかったけど、これも人生だと思う。時間はどんどん過ぎていく。生きている限りずっと次がある。ミスしない人はいない。機械だって故障する。今まで決断したことも何一つ後悔はないから。やらないで後悔するならやる方を選ぶ」。インドで活躍するクリケットのトップ選手は1年間で30憶円稼ぐという。日本のプロ野球選手とケタが違う。その頂への道は想像を絶する険しさだ。だが、「今は毎日がすごく楽しい」と無邪気な笑みを浮かべる。37歳は野球で叶えられなかった夢をクリケットで追い続ける。

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3月7日に発売の雑誌「CoCoKARAnext」では読売ジャイアンツ・菅野智之投手のインタビューの他、プロ野球選手に学ぶ仕事術などストレスフルな時期を乗り越える情報を掲載。

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

[文/構成:ココカラネクスト編集部 平尾類]

木村 昇吾(きむら・しょうご)

1980年4月16日、大阪府生まれの37歳。尽誠学園で3年夏の甲子園に出場。愛知学院大に進学し、遊撃手でベストナインを5度獲得するなどリーグ通算打率・318、5本塁打。02年ドラフト11位で横浜に入団。07年オフに広島にトレードされ、11年は遊撃のレギュラーをつかみ、自己最多の106試合出場で37犠打をマーク。15年オフにFA権を行使したが移籍先が難航し、西武にテスト生で入団。昨年限りで戦力外通告を受け、クリケットに転身。インドのプロリーグでの活躍を目指す。

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