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人生2度目の戦力外通告の裏側――葛藤の中で引退を決意した変則右腕が貫いた“サブマリンの美学”「上から投げる投手には参考にならない部分もある」【DeNA】

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長身をグッと沈ませ、地面すれすれのところからボールを投げ込む中川の独特なアンダースロー。彼には周囲に分かりえない感覚があった(C)萩原孝弘

地元・横浜でブレイクも…いつしか見失いかけた「純粋に野球を楽しむ気持ち」

「ベイスターズのユニフォームを着てプレーすることが、幼い時からの夢でした」

 2023年11月17日、横浜市戸塚区で生まれ育った“ハマっ子”である中川颯は、憧れ続けた青いユニフォームに袖を通し、キラキラと瞳を輝かせていた。

【動画】サブマリンだけじゃなかった 横浜を彩った中川颯の美しき打撃シーン

 一度はプロの過酷な波に飲み込まれ、同年のオフにオリックスで戦力外通告を受けていた中川にとって、故郷・横浜での再起のチャンスだった。それと同時に1998年に球団史上2度目となるリーグ優勝を上げた2日後に産声を上げた男にとって、これ以上ない舞台でもあった。

 184センチという長身でありながら貫いたアンダースロー。幼少期から続けてきたフォームと投球術には、人一倍こだわりがあった。

「上から投げるピッチャーの方は参考にならない部分もあると思います。バッターによって反応は違いますし、僕はパターンにはめるというよりは、僕がバッターに対応していくみたいな感覚でやる感じですね。そこはやっぱり臨機応変に対応していくのが自分の強みだと思っているので、そこは大事にやっていければいいと思います」

 プレーの数値化が主流となった現代野球。そんな時代にあって少数派となった下手投げだからこそ、既成のデータや型に自分をはめるのではなく、“己の感性”で打者と対峙する。それこそが、彼が過酷なプロの世界で生き残り、自らを磨き上げてきた最大の武器であり、揺るぎないプライドだった。

 移籍1年目の2024年、その強みは遺憾なく発揮された。先発に、リリーフに、様々な局面で献身的に腕を振り、打者としてホームランも放った。球団26年ぶりとなる日本一の立役者の一人となり、文字通り下剋上の象徴的な存在ともなった。

 しかし、プロの世界は厳しい。翌シーズン、思い通りの成績を残せず2軍で過ごす時間が長くなると、中川の心には焦りと葛藤が押し寄せていた。「身体には何の問題もない」というコンディションに問題がないからこそのプレッシャーが重くのしかかった。

 元来、繊細なメンタルの持ち主。結果を求められるプロの厳しさの中で、いつしか「純粋に野球を楽しむ気持ち」すらも見失いそうになっていた。

 もがく状況を打破するべく、昨オフには自ら志願してオーストラリアン・ベースボールリーグへの武者修行を決意した。

「野球を楽しんでやれるようになりたいですね」

 渡豪前にそっと漏らした言葉にこそ、結果や重圧にさらされ、傷つきながらも必死にもがいていた彼の本音が滲んでいた。

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