“神世代”とは対照的な2010年の唯一の生き残り 元阪神の育成2位が歩んだ紆余曲折な野球人生「“1人中学生おるやん”みたいな感じだった」【虎とドラフト】
2010年のドラフトで育成指名された島本。そこから紆余曲折を経ながらもプロ野球の世界で生き残り続けている(C)産経新聞社
同期を見て「絶望」を感じたプロの世界
阪神ファンの間で「神ドラフト」と称されるのが、佐藤輝明を近大から1位指名した2020年ドラフトだ。
昨季に40本塁打をマークし、今季は三冠王にも輝いたリーグ屈指の強打者にまで成長した逸材の交渉権獲得はその後のチーム編成の上でも非常に大きかったと言える。そして、この年は佐藤輝だけでなく2位では社会人の即戦力左腕の伊藤将司(JR東日本)、5位で村上頌樹(東洋大)、6位で中野拓夢(三菱自動車岡崎)、7位で高寺望夢(上田西)、8位で石井大智(高知=独立L)と、23年、25年、そして今季のリーグ制覇において中心を担う主力を獲得していることが「神」と言われる所以だ。ちなみに育成1位だった岩田将貴も移籍したDeNAで今季から主戦リリーバーに定着し、奮闘している。
【動画】チームに欠かせない存在!島本の安定感あるピッチングシーン
これほど“獲れ高”のあるドラフトは珍しく、今後数年もこの“神世代”がチームの根幹を担っていくことは間違いないだろう。一方で、勝負の世界で、すでにほとんどの選手がユニフォームを脱いでしまっているドラフトもある。2010年のドラフトは個人的に今も印象に残っている。
記者1年目で初めて取材したドラフトという理由もあるが、この年、支配下5選手、育成3選手を指名した中で今も現役で奮闘しているのが、育成2位で福知山成美から指名された島本浩也(現・日本ハム)だ。
ドラフト会議翌日、スポニチの1面は、社会人の即戦力左腕で1位指名の榎田大樹(東京ガス)が飾り、夏の甲子園準優勝右腕で2位指名した一二三慎太(東海大相模)も大きく扱われていた。そんな華々しい紙面の中で、育成2位指名の島本は写真もなく、数行のコメント掲載だけだった。3位・中谷将大(福岡工大城東)、4位・岩本輝(南陽工)と支配下で指名された他の高校生もおり、取り立てて目立つ存在ではなかった。
島本は、当時をこう振り返る。
「指名されてプロにいけるというのはもちろん嬉しかったです。でも、あの年のドラフトの中で僕が一番最初にクビになると思われていた。客観的に見ても“1人中学生おるやん”みたいな感じだったので」
当時、体重は60キロ台で同期入団の一二三、中谷の身体を見てまず絶望したという。「みんな、身体デカって。これはやばいって思いました」。まだ1球もマウンドで投げていないのに、とてつもなく高い壁を感じてしまった。ただ、同時にプロまでたどり着いたマインドを、この時に思い返したという。
「小学校も中学校も一緒なんですよ。まず周りを見てデカってなって。それでもずっとその中で勝ってきたので。プロの世界はそんな甘くないとはもちろん思っていましたけど、自分を信じてやっていこうと。まずは支配下にならないと始まらないので、そこを目標にやっていきました」
体格差を少しでも埋めるべく、プロ入り後は食事量を増やして体重アップに着手した。球速アップにもつながると期待しての肉体改造。体重は70キロ台に乗り、球威は自然と増した。そして4年目のシーズンオフに支配下選手として契約更改。競争に割って入る挑戦権をようやく手にした。













