ボクシング界の想像を越える井上尚弥の“大谷級の価値” 米メディアによる日本開催への批判はお門違いではないか

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井上の前に並べられる呆れる言い訳

 井上の持つ“怪物級の価値”は、ボクシング界の生き字引も認めるところである。

 井上が契約を結んでもいる『Top Rank』の御大であり、伝説的なプロモーターでもあるボブ・アラム氏は、他でもないアメリカのボクシング専門YouTubeチャンネル『Fight Hub TV』で、こう断言している。

「私が見ているものは恐ろしいものだ。イノウエは本当に良い対戦相手を圧倒する。あのサイズのファイターが、あれだけのパフォーマンスをするのを見たことがない。イノウエは積極果敢に戦いに挑み、相手をノックアウトする。私たちが見ている、あの才能は、本当に特別だ。野球界にとってショウヘイ・オオタニが特別であるようにボクシング界にとってイノウエはスペシャルなんだ」

 もちろん契約下にある選手対する称賛には、リップサービス的な部分は少なからずある。とはいえ、ボクシングの酸いも甘いも知る92歳が、「恐ろしい」とまで形容するのは異例。さしてニュースになっていないのは驚きですらある。

 今回、ネットで論争を巻き起こした井上のアメリカ参戦を求めるか否かの中で、一部のマニアたちがしきりに論じたのは、日本の怪物が「本当に強い相手と戦っていない」というものだった。

 ただ、これにも筆者は違和感を覚える。振り返れば、昨夏にフルトンと戦う前にも井上は同様の指摘を受けていた。スーパーバンタム級での初陣であったことも影響したわけだが、「体格差で優位に立つフルトンは井上にとって過去最強の相手」と警鐘を鳴らすファンはもちろん、一部ではあったが、専門メディアすらあった。

 しかし、瞬く間にスーパーバンタム級も完全制覇された途端に、「イノウエがベルトを巻いてタイムズスクエアを歩いても、誰も彼が誰なのか分からない」と言い、「フルトンはベストじゃない」と呆れてしまう言い訳を並べるのである。そして、挙句の果てに、3階級も上に位置するデービスとの無茶なマッチメイクを求める。もはや本末転倒ではないだろうか。

 井上は階級上げに対して常々と慎重な態度を見せてきた。それは己のベストを発揮できる舞台をしっかりと見定めているからに他ならない。仮に身体に影響をきたすような階級上げをして、パフォーマンスが落ちれば、興行の価値も下がることを彼は理解しているのだ。

 あらためて、井上を「一人前」と認めようとしない人々にハッキリと言っておきたい。

 井上の価値をしっかりと見定めてほしいと。彼はこれほどグローバルな時代において、多くのアメリカ人ファイターたちが立ち入れなかった領域にいる歴史的な偉才なのだ、と。





[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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