北中米W杯で示した森保ジャパンの進化と限界 一朝一夕ではいかない“個の力”をどう伸ばすか【W杯】
鈴木は世界に通用する力を見せた一人だろう(C)Getty Images
日本が戦った4試合で目に留まったのは、ボランチの選手たちの活躍だ。この活躍は角度を変えてみると、ウイングバックとシャドーの選手が従来の力を存分に発揮できなかったとも見て取れる。しかし、それもW杯アジア予選や親善試合とは違い相手の技術、モチベーションも高い強豪国が集う大会では、想定されることだった。
さらに視野を広げてここまでW杯を戦う国々に目を向けると、世界的にサッカーのスタイルが統一されつつあるということを改めて感じた。前線から激しい守備で相手の動きを封じ、攻撃に転じれは果断速攻でゴールを目指すスタイルが欧州、南米、アフリカ、そしてアジアの垣根を越えてベースとなっている。スタイルが相克する試合というのは少なくなっている。
攻撃面に注目すれば、どの国も決定機の演出は素早く前線へと攻め上がってグラウンダーの縦のスルーパスか、また両サイドを深く切り崩し中央へラストパスを供給する王道の攻めが目に留まった。情報化社会により相手の研究が容易になり、また自分たちも必ず分析されている事実は、サッカーのスタイルを究極的なまでの機能美の世界へと向かわせたようだ。
その組織的な守備に日本の攻撃の要となるウイングバックとシャドーの選手は、手を焼いたわけだ。ただ、その兆候は日本だけに限ったことではなく、どの国も相手から厳しいプレッシャーを受けるなかでのプレーを余儀なくされている。
では、北中米W杯を経験した日本が、これからの未来に向けて目指すサッカーはどんなものになるのか。新生日本が目指すスタイルは、現時点では大きく変わることはないだろう。
ただ、ここまでシステムが重視されると、ゴールを目指すにはもはや戦術重視の定石では限界があり、逆転の発想が突破口になるのではないか。対戦相手への対応力をどの国も持ち合わせているとなると、ゴールを挙げるまでの流れは戦術でチャンスを作り上げ、最後の総仕上げとなるフィニッシュは局面による個人の力がおおいに必要になると思われる。どの国も採用する横並びのチーム戦術を無力化するには、切れ味鋭い個人技が勝敗を左右することになるのだ。
順調に勝ち進むアルゼンチンにはリオネル・メッシ、フランスにはキリアン・ムバッペ、ノルウェーにはアーリング・ブラウト・ハーランドと前線のスター選手が光彩を放っているように、勝利へは個の力がモノを言っている。
W杯で日本はレベルの高い国と対決しても戦術的な部分では、計算が立つことが証明されたいま、そこからさらに勝利への確率を高めるには1対1の勝負を果敢に挑む強いハートと、敵に打ち勝つ技術を持った選手がカギとなる。
戦術重視が極まったいま、勝負を決めるのは個人の技術だ。今後は日本人にもチーム戦術のなかにあって、これまで以上に個の技術が求められることになる。この解決手段を実行できるように、選手は成長を遂げていかなければ、さらなる結果には到達できないだろう。
日本の北中米W杯での戦いは終わった。そして、2030年を目指す日本の戦いは、ここに始まったのだ。
[文:徳原隆元]
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