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中谷潤人との激闘が生んだ「価値」 井上尚弥のPFP1位の長期政権化を米リング誌編集長が断言する理由「イノウエを引きずり下ろす選手は現れない」【現地発】

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東京ドームで実現した中谷とのメガマッチ。その一戦を制した井上に対する評価は依然として国際的に揺るぎない(C)Lemino/SECOND CAREER/NAOKI FUKUDA

中谷戦は「絶対必須の一戦ではなかった」 一体なぜ?

 すでに挙行から1ヶ月以上が過ぎたが、いまだにアメリカでボクシング関係者と会った時には、“5.2”が話題になることが多い。この言葉が意味するものは日本のファンにはもう説明の必要もないだろう。世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋)が、中谷潤人(M.T)の挑戦を受け、超ハイレベルのバトルを演じた5月2日に東京ドームでの一大興行「The Day」のことである。

【動画】先読みし合いの異次元攻防 井上尚弥と中谷潤人が繰り広げた至高のパンチ合戦

 緊迫の技術戦となった達人同士の戦いは、井上が3-0の判定勝ち。軽量級の戦いとはいえ、無敗の複数階級王者による直接対決への欧米の注目度は高かった。アメリカの老舗誌『The Ring Magazine』は、試合前後にこの試合の大特集を掲載。勝ち残った井上は同誌の選定するパウンド・フォー・パウンド(PFP)ランキングの選定委員からも高評価が下され、それまでの2位から堂々の1位に浮上する結果になった。

「ナカタニとの試合以降もイノウエがPFP2位のままだったりしたら、それはほとんど犯罪(Crime)だった。世界最高のボクサーとして認められるためには、継続的にその力を証明し続けなければならない。私は個人的には(2022年の)ノニト・ドネアとの再戦以降、イノウエこそがずっとNo.1だと考えている」

 ダグラス・フィッシャー編集長は先日、「The 3 Knockdown Rule」というアメリカのPodcast番組に出演した際にそう述べた。また、筆者とのやりとりにおいても、フィッシャー編集長は「私は今年のうちにイノウエを1位から引きずり下ろす選手は現れないと思う」と断言していた。

 列島を沸かせた日本人対決が、アメリカの有識者からこれほど高く評価された背景には、そもそもPFPに入る選手同士の直接対決が減少しているという現実がある。特に井上と中谷のように、5つの年齢差があり、立場の異なるスター選手がリング上で拳を交えるのは、昨今の欧米では非常に珍しい。

 中谷戦は井上にとってもキャリア最大のビッグファイトではあったが、個人的にはすでに地位、名誉を確立させた“モンスター”にとって、「絶対必須の一戦ではなかった」とも考えている。いや、「アメリカのリングを主戦場とする昨今のトップファイターはやらなかったであろう戦いだった」と言い換えた方が正確か。

 エリートボクサーたちは基本、常に階段を上ることを目指し、自分よりステイタスや階級が上の選手との対戦を希望するもの。一方で若く、上昇機運のスター候補との戦いは往々にしてリスクがリターンを上回り、すでにスーパースターとしての立場を足固めした選手はメリットを見出しにくい。

 近年のボクシングでは、井上と中谷の関係性、あるいは立場に最も近かったのは、サウル・“カネロ”・アルバレス(メキシコ)とデビッド・ベナビデス(アメリカ)ではないか。

 スーパーウェルター級からスーパーミドル級までの4階級を制して“メキシコの英雄”の座を確立したカネロだが、2023年までスーパーミドル級で戦ったベナビデスとの対戦は受けなかった。特にメキシコ系のファンから圧倒的な支持を受けるカードではあったが、明らかにキャリア後半に入ったカネロにとって、より若く、自分よりも大きく、勢いのあるメキシコ系米国人は危険すぎる相手だったのだろう。

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