「今の子供たちは生まれたときから自分で選ぶことに慣れている世代」仙台育英・須江航監督の言葉から考える「叱る指導」からの脱却に必要な要素とは

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令和の高校野球の指導法の在りかたをめぐって様々な声も出ている(C)産経新聞社

 また高校野球の季節がやってくる。8月5日に夏の高校野球選手権大会が開幕。暑い夏で野球に熱中する球児たちの懸命なプレーが感動を呼ぶ中で、今のスポーツ界で注目されているのは指導法にもある。

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 厳しい叱責を含む「叱る指導」からの脱却が求められる中、現場を預かる指導者たちはどのように令和のスポーツ界における指導法を摸索しているのか。

 「青春って密」という言葉でも一世を風靡、選手の自主性を重んじる指導法で知られる仙台育英の須江航監督と考える臨床心理士として独自のアプローチを行っている村中直人さんに対し、スポーツライターの大利実さんが聞き手となって行われた異色の対談が掲載されている『脱・叱る指導 スポーツ現場から怒声をなくす』(村中直人、大利実共著)の著作から、一部抜粋して、『CoCoKARA Next』で公開する。今回は後編となる。

――前回「叱る指導」の問題として、「たいていの子は、叱られているこの場を早く終わらせたいとしか思っていません。苦痛を感じないために、心を閉ざして、自らの感情にフタをしていると言ってもいいでしょう」と村中先生の発言がありました。

 須江 今の子どもたちは、生まれたときから「自分で選ぶことに慣れている世代」だと感じています。スマホがあり、ユーチューブがあり、自分で見たいこと調べたことを選ぶがことができる。そうやって育ってきているので、誰かに何かをやらされることへの耐性はかなり低いと感じます。

 それこそ、私が子どものときは、父親にテレビ番組の決定権があり、いつも『暴れん坊将軍』や『大岡越前』が流れていた記憶があります。でも、今はそういう家庭は圧倒的に少ないはずです。

――スマホやパソコンがあれば、見たい番組を自分で選ぶことができる。

 須江 こうした背景が関係していると思いますが、自分が興味を持っていることにはとことん追求していく生徒が多い。ひとつの分野に、“尖っている”と言えばいいでしょうか。
 
 たとえば、「興味関心があることに関して、パワーポイントでプレゼン資料を作成する」という課題を出すと、大人が驚くような素晴らしい資料を作ってきます。一方で、興味、関心がないことに対しては、こちらが丁寧に説明して、それに取り組む意味を伝えていかなければ、なかなか気持ちが向いていかない傾向にあります。

 村中 なるほど、今のお話も面白いですね。仙台育英高の生徒に関しては、さきほどの私の仮説が外れていて、むしろ「自己決定」の感覚が育まれているからシャッターが閉じるのが早い。そう考えると「自由度の少ない環境」と、須江先生がお話された「選ぶことを認められてきた環境」の二極化が進んでいるのはたしかなように思います。

 その中間層が少ない。私は教育改革に携わる方と接する機会が増えていますが、公教育における格差の広がりを感じています。子どもの自己決定を尊重してきた家庭からすると、それを認めてくれない学校に入学させるのは迷いがあるもの。自己決定を尊重し、主体性を育んでくれる学校を選ぶのは当然の考えです。

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