いまさら聞けない卓球の魅力 「回転」の奥深さを元日本代表が解説! 何気ないレシーブミスは実はただの“凡ミス”ではない!?

加藤さんが回転の妙味を分かりやすく解説してくれた(C)CoCoKARAnext
近年「観るスポーツ」としても注目度が高まっている卓球。世界一を決める世界選手権は毎年テレビでも中継され、2018年には国内初のプロリーグ、Tリーグもスタート。多くのスター選手も輩出され、卓球ファンは年々増加している。
そんな卓球の魅力とは何なのか。どこに注目するとより面白く観戦できるのか。世界選手権ベスト8など輝かしい成績を残した元日本代表の加藤美優さんに聞いた。
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――ずばり卓球の魅力、面白さと言えばなんでしょうか?
スピーディーなラリーだったり、老若男女楽しめる競技性だったり、魅力はたくさんありますが、卓球ならではの面白さをあげるとしたら、やっぱりボールの「回転」ですね。球技はたくさんありますが卓球ほど回転が重要な競技はないと思っています。
――確かにプレーを見ているとサービスではいろんな回転をかけていますし、ラリーでも強い回転で大きくカーブしながらボールが飛ぶシーンをよく見ますね。
そうなんです。常に何かしらの回転をかけて打ち返す競技が卓球です。そして実はあまり知られてないのですが、卓球は打球する時に相手の回転の影響を大きく受けるので、正しいスイングで打たないと返したい方向とは全然違うところにボールが飛んでいってしまうんです。例えば卓球には「上回転」「下回転」という、いわゆる前進回転と後進回転(バックスピン)のボールがあるのですが、相手の打球が下回転なのに、回転がわからず上回転だと思って打ち返すとボールはネットにも届かず、真下に落ちてしまうんです。
――確かに初級者の人が経験者の回転サービスを返せないシーンってよく見ますよね。
それです。回転がわからないと全然返せないんですよ。トップ選手の試合でも、そこまですごそうに見えないサービスに対して相手が大きく浮かすことがあって、知らない人が見たら「なんで?」って思うかもしれないんですけど、あれは回転を見誤っているんです。決して凡ミスではないってことは知っておいてほしいです(笑)。
――それだけ聞くと難しい競技にも感じてしまいますね。
でも慣れたら大丈夫ですし、逆にそういう回転の違いを使って相手のミスを誘ったりするのが卓球の面白いところですね。そして特に回転が大事になるのがラリーの1球目でもあるサービス。ここでいろんな回転をかけて、相手を崩すことができるかどうかが勝負のポイントになるので、卓球では「サービスが一番大事な技術」とも言われます。
――サービスでは相手との駆け引きも大切ですよね。
そのとおりです。サービスはお互いに2本交代で出すのですが、その2本をどう出すかはすごく考えます。1本目で効いたサービスをもう1回出すのか、相手が待っている可能性があるから違うサービスにするのか。相手の表情も見ながら、できる限り読みを外すようにしています。
あとは試合全体を通してのサービスの組み立てもあります。試合の序盤で効いたサービスをあえて中盤では出さないで最後の最後で使うというのはよくある戦術です。私の場合は、しゃがみ込みサービスが武器なのですが、出足は使わず1ゲーム目の後半とか確実に点が欲しい時に使っていました。強い回転でバウンド後に“伸びる”サービスはかなり効きましたね。
――そうなるとサービスを受ける側の駆け引きもあるわけですね。
卓球ではサービスに対する返球を「レシーブ」と言うのですが、レシーブの駆け引きも重要ですね。ミスなく返すことは当然ですが、かと言ってただ返すだけだと相手に次で攻められてしまいます。あまいサービスに対しては積極的に攻めたいですし、時には「次はこのコースに来るはず」とヤマを張って攻撃的なレシーブを仕掛けることもあります。