世界最強カットマン・橋本帆乃香を破った完璧なプレー 大藤沙月が決勝で示した“現代卓球のリアル”

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 世界最強のカットマン橋本の優勝を予感させるラリーだったが、そうはならなかった。大藤が完璧なカット打ち(カットに対して攻撃すること)を見せたからだ。

 大藤は、5ゲームトータルで212回のフォアハンドドライブとスマッシュを打ったが、ミスをしたのは14回のみ。そのうち9回は、橋本がサービスや横回転ツッツキで仕掛けた場面で、普通のカットに対するミスは5回だけだった。その5回は大藤が失った第2ゲームと、次の第3ゲームに集中しており、他の3ゲームではゼロ。ノーミスだ。いかに鉄壁の守備を誇る橋本でも、返しても返してもこれだけミスなく攻め続けられたら勝ちようがない。

 橋本はミスをしないが大藤もミスをしないのだ。そうなれば当然、速いボールを打っている方が勝つ。橋本が得点するためには、リスクを冒して反撃するしかないが、この試合ではわずかに外れること12回で、成功した8回を上回ってしまった。それだけ無理な反撃をしなければならないほど大藤のカット打ちは完璧だった。

 どちらもミスをしない前提なら、相手のミスを得点源とするカットマンには端から勝ち目はない。だからカットマンの女子シングルス世界チャンピオンは1981年の童玲(中国)以来45年間出ていないし、男子シングルスは73年間出ていない。総論としてはカットマンは不利だ。しかし人間はミスをする。その可能性に勝機を見出すのがカットマンであり、ときにそれは世界選手権の決勝で中国選手を破る偉業を成す。

 大藤は完璧なプレーでその可能性を叩き潰したのである。

[文:伊藤条太(卓球コラムニスト)]

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