「もう一人の自分との勝負」ドラ3ルーキーが魅せる日本で稀有な大型遊撃手の“片鱗” 元首位打者コーチたちが「本当に衝撃」と認める力【DeNA】
2軍でもバットを振る中で、宮下が追及したのは打撃の質であり、内容だ(C)萩原孝弘
「もうちょっと変えてみる」という勇気
もっとも、2軍で取り組んだことが、そっくりそのまま1軍で通用する訳では無い。
2軍から宮下を見続けてきた鈴木尚典コーチも宮下の思考力を認めている。その上で実戦での経験がモノを言うと説く。
「試合の中で、何かに気づくという経験をした方がいいと思うんですよね。1番はやっぱり自分が打席で何を感じて、じゃあそれをこれからどういう風に変えていくかっていうのを話し合いながらやっています。けど、結局は本人が考えないといつまでたっても成長できない。そういう意味でも本当に成長してますよ」
キャンプ初日の“自主朝練”のように、やるべきことの整理が、今の打席にも繋がっている。
「150キロ超えの球をバットいっぱい長く持って、今の自分が打てるのか打てないのか。それをやっぱ自分で感じて『じゃあ、もうちょっと変えてみる』。そういう勇気みたいなものを持って、取り組んでますね」
首脳陣の期待と指導に対し、当人も1軍の打席で常に思考を巡らせる意識を高めている。出番が限られる代打の場面でも、相手の配球、自分のスイングのズレ、そしてチーム状況を考えながら、一打席ごとにテーマを持って打席に入る。
先述の巨人戦で放ったサヨナラヒットは、その姿勢が如実に現れた結果だった。
「代打で後半から出るっていうのはイメージしていました。ただ代打の成績が出ていないので、その1打席の大切さをもう1度しっかり考え直してやっていきたいなと思いました。ここはもう一人の自分との勝負。初球から振れたのはよかったですね」
自分の感情と戦いながら、チームの状況にも目を向け、自分に何ができるかを考える。この積み重ねが、実戦での対応力に繋がっている。
課題への取り組みは、もちろん、練習にも表れる。左投手に比べ、数字が上がらない右投手への対策も怠らない。
「早出でバッティングをして、右を打つ回数を増やそうっていうのを心がけてやってます。左のピッチャーもインコースを攻められてくるので、そこをどうしたら打てるかっていうのは考えてますね。なんとかヒットを打てるような形を身につけようと、コンパクトにしてヒットを打てるようにという意識ではやってます」
早出練習も、ただただ数をこなしているわけではない。1軍で何を求められているのかを理解し、その課題を具体的な練習へと落とし込んでいる。
考えて、努力する――。球団史を顧みても稀有な大型ショートとして、宮下朝陽は着実に成長の階段を上っている。
[取材・文/萩原孝弘]
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