なぜエンカーナシオンは日本にハマったのか? 快進撃を呼び込んだ“真摯な姿勢” 首脳陣に訊いた良助っ人の「素顔」【DeNA】
阪神との上位対決で打率3割を記録するエンカーナシオン。その勝負強さもチームに勢いを生んだ(C)産経新聞社
怠らなかった細かな準備と見失わなかった“芯”
自分がメジャーリーグからやってきたという一種の慢心はなかった。エンカーナシオンは、相手投手の映像を見直し、試合前には低めの変化球対策を行うなど、細かな準備を怠らなかった。
「日本野球は初めての経験だった。だから、動画を見直したり、毎日自分のできることをしっかりと取り組んでいった」
一方で、異国の環境に適応しながらも、自らの打撃の“芯”を見失わなかった。
「基本的にはアメリカ時代と何も変えてない。どこであっても自分にとっては同じ野球。自分のアプローチの仕方は変えずに、打席に集中して自分のできることをするだけ」
新しい環境に真摯に向き合う柔軟さと、自分自身のスタイルを貫く精神的な強さ。双方が噛み合ったことで、28歳の助っ人は、途中加入ながら4番としての確固たる立ち位置を築いていった。
エンカーナシオンが4番に座り、打線にも明確な「軸」が生まれた。攻撃面におけるプランニングを担う靏岡賢二郎ベンチコーチも、存在感の大きさに目を見張る。
「4番に彼のような打者を据えられて、1つ『軸』ができたというのはもちろんあります。シーズン途中の加入ですが、彼の持ち前の明るさと取り組みも含めてベイスターズに非常にマッチしています。彼の対応力がそこに相まっていたのかなと感じます」
打線の核が確立され、得点力の向上はさることながら、得点が増えた影響を受けた投手陣にも心理的な余裕が生まれる相乗効果も生まれた。そうして、チーム全体にポジティブなサイクルと、勝つ流れが生まれていった。
そして、エンカーナシオンが数字以上の影響力を及ぼしていたのが、ベンチでの姿だった。味方が長打を放てば身を乗り出して喜び、得点が入ろうものならより大きなリアクションで生還した仲間を出迎える。それはスタメンを外れてベンチを温めているときでも変わらずに貫かれた。
「チームメイトが活躍してくれたらすごく嬉しい。だからそれを表現するということ。知識や性格的にも『野球を楽しむ』というところを大事にしているので、そういう意味でああいう行動をしている」
「1人ひとりが自分の役割を果たしたおかげ」とチームファーストを貫き、勝利を目指して仲間と野球を楽しむ。エンカーナシオンの熱量は、確実にチーム全体へ波及していった。それは村田二軍監督が期待していた通りの、ポジティブな新しい風を吹き込ませた結果だった。
10月4日に行われた阪神とのレギュラーシーズン最終戦でも試合を決める一打を放ち、CSでのディスアドバンテージを回避する大きな貢献を果たしたエンカーナシオン。いよいよ迎える短期決戦のポストシーズン。だがその眼差しにブレはない。
「自分にとっては同じ野球。シーズン中と同じ気持ちで、自分の役割をしっかりこなしたいと思う」
入団会見で宣言した「チームの勢いを上げる」という言葉通り、自らのバットと明るさでチームを苦境から引き上げた“ジェリー”。仲間とともに野球を楽しみ、チームを前へ進める頼れるドミニカンが、日本一に向けた下剋上のカギを握る。
[取材・文/萩原孝弘]
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