名コーチの冷静で、温かい分析で「変わった」
修正を図る上でポイントとなったのが、藤岡好明投手コーチとのキャッチボールだった。
「僕はキャッチボール相手で変わるタイプなんです。相手のいい動きが、自分の動きの“鏡”になるというか。藤岡さんは身体の使い方がめっちゃわかりやすいんですよ。藤岡さんとのキャッチボールで変わりました」
藤岡コーチの視点は、冷静で、そして温かい。
「別に特別なことはしてないですよ。キャッチボールで『いいリリースのタイミングで投げようよ』っていうのを伝えることの繰り返しなんで。4月、5月は悪いって言ってましたけど、ボール自体はそんなに変わらんし、スタッツも全然悪くない。本人が不安なく試合に臨めるようにしてるだけです」
謙虚な言葉の裏にある、的確なアドバイス。本人の抱く“感覚と数値のズレ”の核心は、リリースの位置、そして勝負球であるカーブの軌道だった。藤岡コーチは「カーブのリリースポイント」を修正の軸に据え、一軍という張り詰めた舞台で戦う若き右腕へ、原点回帰の重要性を説いた。
「まずは基本を忘れずにやる。1軍にいると自分の強みを忘れがちになります。バッターに集中しすぎて、自然と曖昧になっていく部分もあると思う」
白球を行き来させながら対話を重ね、ストロングポイントを再確認する。この地道な作業によって、宮城は新たな課題へとフォーカスできるようになった。
「もう1個上の段階に上がるなら、自分で意図的にボールを散らしたり、嫌なところを突いたりしないと。普通に勝負してると、もうまとまってるピッチャーだと見られて、打ちやすいと思われるんで。勝負の仕方も自分でコントロールしないといけないところまで来てるんで、最近の課題はそこですね」
序盤戦は投げたくても投げられない日々も続いた。それでもベテラン捕手の戸柱恭孝に「大丈夫だ、我慢しとけ、絶対回ってくるから」と励まされ、牙を研ぎ続けた成果は、夏場に入ってから証明される。
前半戦を苦しみながらも大崩れせずに戦えた背景には、それこそ昨年の経験で培った引き出しの多さがあった。
「今年、成長を感じるのは、身体もボールも今日は全然ダメだなっていう日も、なんとかして抑えられるようになったことです。マウンドの上で『どんな引き出しを開けようかな』って試せる余裕が今年はある。良かったから抑えられるではなく、悪くても抑えられるようにはなりました」