苦闘の中で消えた“エゴ”
そんな宮城には心に深く刻まれた試合がある。7月2日に行われた広島戦だ。
6月30日に新潟で行われていた同カードで山﨑康晃が抑えに失敗。本拠地に帰ってきた負けられない一戦だった。試合前のミーティングでは、助っ人投手のショーン・レイノルズがチームを鼓舞し、全員が「大事な試合だ」と覚悟を決めて挑んでいた。
しかし、9回、山﨑が乱調で2点差無死一、二塁のピンチを招くと、宮城が急きょ登板。いわゆる“火消し”を託されたが、期待に応えられず同点とされてしまった。
「気持ちは入っていたんですけど、自分の中で整理できてなかったんです。正直、冷静に戦えなかった。苦しんでいたヤスさんのためにも、『絶対抑えなあかん』『同点でもダメ』『絶対に勝ち切る』とか……」
オフの自主トレ期間をともに過ごし、公私ともに世話になっている先輩への強い想いが、逆に自分を追い込み、空回りへと繋がった。
負けられない試合で悔しさを味わった。しかし、周囲からかけられた「まだシーズン続いてるよ。終わりじゃないよ」という言葉に救われた宮城の心は折れていなかった。7月10日の巨人戦。7回途中、一打逆転のピンチで登板した宮城は、見事に後続を断ち切り、お立ち台に立ってみせた。
「もうここは同じ失敗は絶対しない、したらダメって感じでしたね。それはあの経験があったからこそだと思います。だからあの試合は意味のある試合だったのかなと思います」
手痛い経験を、自らの血肉に変えた。
シーズン後半戦に向けて暑さは厳しくなるばかり。先発陣のコマが十分とは言い難いチーム状況で、リリーフ陣にかかる負担も増していく。その中で宮城には、開幕当初抱いていた「勝ちパターンで投げたい」というエゴはない。
「今年ビハインドでの登板をいっぱい経験して、改めて投げられることにまず感謝しないといけないなと思って。リリーフとして『行け』って言われたところでパッと結果を出すのがかっこいいじゃないですか。どこでも行けるマインドを持って準備しますよ」
現在ブルペンを支えてきた守護神・山﨑康晃が戦列を離れている。リーダー格の存在が抜ける中で、宮城はブルペン全体を見渡す視点を持ち始めている。
「自分1人では、ブルペンをどうにかできない。みんないないと成り立たないし、誰かがいっぱい投げてる時は、他の人がカバーしないといけない。ほんとにブルペンって1つのチームだなって今年は感じるんです。
そんな意味でも、ブルペンの中でみんなにとって大事な存在になりたいです。この人がいないとシーズンやっていけない、みたいな存在になりたいです。僕の中では伊勢さん、ヤスさんとか、スカイ(レイノルズ)とかの位置にまで行きたいですよね」
ただ投げることだけでなく、ブルペン全体のバランスを取り、雰囲気を支える存在になりたい――。そんな自覚も芽生えている。
周囲のアドバイスに耳を傾け、自分を見つめ直す。高卒育成叩き上げの右腕は、ビハインドでも、勝ちパターンでも、そして投球以外の場所でも。大らかさと繊細さを兼ね備えた島人は、横浜のブルペンを束ねる新時代のリーダーへと脱皮を遂げようとしている。
[取材・文/萩原孝弘]
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