「お前の感覚を信じろ」――神童に刺さった帝拳OBの進言 井上拓真戦前に那須川天心が掲げた“本能の闘い方”の真意「ボクシングをやろうと思わない」
井上と並び立ち、殺伐としたオーラを放った天心(C)CoCoKARA next
弱点を知り、強くなる
試合が迫り、緊張感が高まる中での金言。世界の頂を見た男の言葉は、「すげぇ助かった。言っていただいて、心が楽になった」と神童に突き刺さった。
無論、感覚だけに頼り切るわけではない。5年前の電撃転向以来、死に物狂いで積み上げてきた努力や基礎があるからこその「本能のボクシング」である。
「反復練習をしてきたからこそできる。いきなり本能に任そうかって言ってできることではない。自分で色んなことをのみ込んで、やってきたからこそなんで。(戦術的に)サプライズが必要な時も来ると思う。真面目に戦っているだけじゃ僕の良さは出ない。色を出す時は来る。そこで相手に『嫌だな』と思わせるか。前回は僕がそれをされた。那須川天心を出す。ボクシングをやろうと思わない。型がありながら、自分の色を存分に出せたら良いと思ってます」
約5か月前に「正直、怖いところもある」と漏らしながら挑んだファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)との再起戦では9回TKO勝利。キックボクサーだった15歳からボクシング指導を受けていたGLOVESジムの葛西裕一会長とともに、原点回帰を測りながら自身の弱点を徹底的に洗い出した。
負けたことで自分の弱さも知った。そうしてボクサーとしての経験値を増やしたからこそ、天心は本能で戦うという境地に辿り着いた。
もう負けたくない。「一番強くて、一番かっこよくて、一番面白い、そして一番痛い俺が、俺のことを信じている。だから、絶対大丈夫」と豪語する28歳は、背水の覚悟で、雪辱を果たしに向かう。
[取材・文/構成:羽澄凜太郎]
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