井上拓真が引き込んだ“ボクシングの妙” ダウンを奪いながらも負けた那須川天心が漏らした「敗因」 計算外だった採点に天才は何を想うのか?「わかんねぇ…」
試合後、控室に記者を呼び込み、緊急で会見を実施した天心(C)CoCoKARAnext
陣営の計算外だった序盤4ラウンドの採点
「悔しいですよね。今も何が何だか分からないです。ここまで本当に毎日、これだけやっても無理かって思いますね。自分は誠心誠意、日々…、なんていうか、応援してくれてる人もたくさんいて、負けって結果はすごい悔しい」
試合後、恒例の会見は急きょ控室で行われた。そこで打ちひしがれた姿を見せた天心は、そう漏らした。
やはりこみ上げたのは、悔しさ、そして絶望。渾身の一撃でダウンを奪っても、ポイントゲームで差を埋めきれない現実に歯がゆさがあった。
「ポイントというか、自分的にはすごく優勢というか。自分の中では『すべてやったぞ』という感じが出たんじゃないかなと思いました。ポイントとか、周りから見てどうだったかは分からないですが、体感として腹も効いていたし、顔も嫌がっていたので。本当、ボクシングで負けたなという感じでしたね。まあ、全部出し切りました」
とりわけ天心がもどかしさを抱いたのは、序盤4ラウンド。終了時に公開採点で2者が王者リードと採点し、そのうちの一人は40-36と大差をつけた。
プロボクシングの採点は、有効打と積極性、そして試合の主導権を握るリングジェネラルシップを評価する。そして、なるべくどちらかに優劣をつけるマストシステムを取っている。しかし、序盤の流れ、そして試合の雰囲気を変えたジャッジは陣営にとっても計算外だった。セコンドについた葛西裕一トレーナーも「ビックリしましたね。想定通りの展開だったので」と漏らしたほどである。
この4ラウンドを「向こうは絶対ボクシングをしてくる」と思っていたという天心だが、「僕もそこで負けちゃいけない」と駆け引きを展開。同等以上にやれていたという手応えは十分にあった。だからこそ、「ボクシング。こんなに難しいかって思います」。
「倒すだけがボクシングじゃないんだなっていう。ダメージだけがボクシングじゃねえんだなって。ちょっとしたポイントだったりとか、なんか優位に見せるとか、そこの学びが必要なのかなって思いましたね」
無論、2度負けたからと言って「限界」を感じたわけではない。だからこそ、余計に目に見える結果が歯がゆい。
「だってダウンも取ったし。自分の中では本当、負けた気はしていないんですよ。本当に『ボクシングで負けた』という感じです」
会見後、複数人の記者と話し込む中で「よくわかんねぇ……」と漏らした。これほどまでもがく天心は見たことがない。天才は「幻想を壊す」と誓った井上拓真との第2戦で、ボクシングの沼にハマった。
ここからどう抜け出すか――。「2回負けてますし、いろいろ考えますね」という答えは今すぐには見当たらない。
[取材・文/構成:羽澄凜太郎]
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