利他主義者の多さは強さに関係する?運動パフォーマンスとの関係性

タグ: , , , 2022/10/20

利己的な人と利他的な人の決定的な違い

利他的な行動は一見すると自分にとってメリットのない、非生産的・非効率的なことのように感じる方もいるのではないでしょうか。ただし、利己的な人と比べると実は利他的な人こそ強い精神性を保持していると考えることもできます。

利己的行動を行なっている人は、自身の利益を優先するあまり他人を羨ましく思うことや、時には憎んでしまうこともあります。こうした行動を繰り返すと周囲に仲間が増えず、孤独を強く感じるようになることも多いようです。

特に、困窮した状況で手を差し伸べてくれる人がいないと精神的に受けるダメージは計り知れないでしょう。一方、利他的な人は同じ志を持つ人や近いコミュニティの人との良好な関係を構築しやすいため、一時的にアウェイな状況や困難な場面に陥ってもすぐに救いの手を差し伸べられやすいです。

このように利他的な人こそ困難を乗り越えやすいことが多く、結果的に幸福感を感じやすくなることが多いと考えることができるのではないでしょうか。これはスポーツなどの競技においても言えることであり、特にチームでプレイをする競技の場合は仲間の支えなくして逆境を乗り越えることは非常に難しいのではないでしょうか。

こうした考えからも利己的であることは、チーム全体にとっても重要なことなのではないでしょうか。

利他主義者の多いホッケーチームは得点率も高い

ニューヨーク大学スターン経営大学院の行なった研究※There’s No “I” in Team: Altruism as a Predictor of Team Success in the National HockeyLeague(Stevens et al.2018)では、実際のナショナル・ホッケー・リーグ(NHL)において利他主義者の多さが成績に影響を及ぼす要因であるということがで説明されたそうです。

この研究では選手をそれぞれ「タフ」「技巧派」「利他主義者」に分け、得点に対してこれらの選手を要因として主成分分析を行いました。この結果、利他主義者を多く含むチームでは得点や目標の達成率が高いことが浮き彫りになりました。また、同時に得点に繋がるプレーの多い利他主義者の選手は他の選手と比べて年棒も高い傾向にあるということも示唆されたそうです。

ホッケーは「氷上の格闘技」とも呼ばれ白熱することも多いスポーツですが、こうした競技ではチーム全体を俯瞰し気にかけてあげることのできる選手が多いほど成果が出やすいということがわかりました。利他主義者の多さが良い結果をもたらすという傾向は、ホッケーにかかわらず多くのチームスポーツにおいても同様の傾向がみられそうです。

激しいスポーツであればなおさら、「周囲への気配り」を意識して行なってみてはいかがでしょうか。





強さは優しさの中に存在する、利他的な人であふれたチームは全体的な運動パフォーマンスも高い

利他的な考えが当たり前になっているチームでは「相手の状況を把握すること」が無意識で行われているのではないでしょうか。

成果としての本質的な強さは「他者を打ち負かすこと」ではなく「仲間を最高のパフォーマンスへ導き合うこと」と考えることもできます。

自身のことだけでなくチーム全体の状況を把握することは、一見すると直接的な成果に繋がらないようで、実は成果に大きく影響する重要なポイントになります。“単に個々の運動パフォーマンスが高い寄せ集めチーム”ではなく、”お互いに気遣うことができるチーム”こそ真の強いチームと言えるのではないでしょうか。

もし、自身のチームの成績が伸び悩んでいると感じる場合は、今一度、自分が仲間と自分の優先順位を見直してみると解決の糸口が見えてくるかもしれません。

※参照論文・There’s No “I” in Team: Altruism as a Predictor of Team Success in the National HockeyLeague(Stevens et al.2018)

[文:スポーツメンタルコーチ鈴木颯人のメンタルコラム(https://re-departure.com/index.aspx)]

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

【関連記事】ヤクルト連覇!主砲・村上の「鬼メンタル」の理由とは

【関連記事】「大きな目標の前に小さな目標を立てる」女子ボクシング・並木月海流 メンタルヘルスの整え方

【関連記事】「たまたま出た結果」をスポーツメンタルコーチはどう捉えるか?

一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会
代表理事 鈴木颯人

1983年、イギリス生まれの東京育ち。7歳から野球を始め、高校は強豪校にスポーツ推薦で入学するも、結果を出せず挫折。大学卒業後の社会人生活では、多忙から心と体のバランスを崩し、休職を経験。
こうした生い立ちをもとに、脳と心の仕組みを学び、勝負所で力を発揮させるメソッド、スポーツメンタルコーチングを提唱。
プロアマ・有名無名を問わず、多くの競技のスポーツ選手のパフォーマンスを劇的にアップさせている。世界チャンピオン9名、全日本チャンピオン13名、ドラフト指名4名など実績多数。
アスリート以外にも、スポーツをがんばる子どもを持つ親御さんや指導者、先生を対象にした『1人で頑張る方を支えるオンラインコミュニティ・Space』を主催、運営。
『弱いメンタルに劇的に効くアスリートの言葉』『モチベーションを劇的に引き出す究極のメンタルコーチ術』など著書8冊累計10万部。

「モチベーション」新着記事

『CoCoKARAnext』編集スタッフ・ライターを募集

CoCoKARA next オンラインショッピング

PICK UP ユメロン黒川:寝姿勢改善パッド「nobiraku」 寝ている間が伸びる時間

腰が気になる方!腰まわりの予防に、試してみませんか? 寝ている間が、ととのう時間。 nobirakuはパフォーマンス向上の為の“大人のお昼寝”にも最適!

商品を見る CoCoKARAnext
オンラインショップ

おすすめコラム

人気タグ一覧