井上尚弥はなぜ“最強”なのか? 異例の亀戦法で批判された元世界王者が語った衝撃の記憶「ほとんど足の感覚がなくなっていた」

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井上に打ちのめされ、衝撃的なダメージを負ったバトラー。彼の目に映ったモンスターは、「ボスのようだった」という(C)産経新聞社

「亀戦法」によってあらゆるパンチを浴びた男

 この試合は意外にも11回までもつれ込む。なぜなら守戦を選択したバトラーが粘りに粘ったからだった。

 当時、英国人王者の戦いぶりは、井上本人が「勝つ気があるのか」と苛立ちを露わにし、母国内でも「気分が悪くなる」(IBF世界フライ級王者のサニー・エドワーズ)と批判を受ける異例の事態となったが、劣勢にあったバトラーからすれば、「それしかない」選択だった。

 自ら選んだ「亀戦法」によって、ありとあらゆるパンチを浴びたバトラーは、井上のパンチ力が「いわゆる一撃必殺のKOアーティストが繰り出すようなタイプとは違う」と証言。リングで負ったダメージの大きさをリアルに描写している。

「8ラウンド目の残り2秒のところで、俺はイノウエのバックハンドを食らった。顎に真っ直ぐ当たったんだ。それでラウンドが終わるゴングが鳴ったことは覚えているんだが、自分のコーナーでジョー(トレーナーのジョー・ギャラガー氏)が何と言っていたのかを、一言も覚えていないんだ。そして9ラウンド目に出るために立ち上がった時、『まだ足が震えている』と思ったのを覚えている。もう、ほとんど足の感覚がなくなっていたんだ」

 力任せな一撃ではなかった。それでも足が震えるほどの状態に陥ったというバトラーは、「デオンテイ・ワイルダー(元世界ヘビー級王者)のような一発の重みというわけじゃない。タイミング、スピード、そして正確さがある」と力説。そして、こう続けている。

「リング上での彼はまるでボスみたいだった。彼は小柄な男だが、技術、パワー、存在感、能力……文字通り全てを兼ね備えている」

 5月2日、井上は東京ドームの大舞台で、自身と同じく32戦無敗のキャリアを送ってきた中谷潤人(M.T)と対峙する。リーチや体躯では挑戦者が上だが、はたして、怪物はどう闘うか。最強と呼ばれる王者のファイトに楽しみは尽きない。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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