「網の目をくぐる思いで野球を見ろ」――2軍で燻ぶった若手を次々と1軍戦力へと引き上げる入来祐作コーチの“野球哲学”の真髄【DeNA】
変則左腕の岩田。凄まじい球威の速球を持っているわけではない彼がどうしてブレイクを遂げたのか。その背景には、入来コーチの言う「技術」があった(C)産経新聞社
技術とは“見る力”。その意味は――
入来コーチの指導は、単に球速や球威だけを追い求めるものではない。群雄割拠のプロ野球という世界で、圧倒的な力で打者をねじ伏せられる投手は、ごく一握り。だからこそ、多くの投手には”技術”が必要だという。
今シーズンにブレイクを遂げた変則左腕の岩田も、入来コーチの考え方を象徴する一人だった。
「すごい球があるわけじゃない。なので、どうやっても球数を要するんです。それを覚悟の上でやりなさいと」
カウントが悪くなれば終わりではない。そこからどう打者を観察し、自分の技術を使ってアウトを重ねるか。そんな駆け引きの積み重ねこそが、プロで生き残る術だと説く。
「結局は『根負けするな』ですよ。根負けするなって言ったら精神論に聞こえますけど、そうじゃなくて、それは技術なんです。絶対バッターには隙がある。カウントによっても、ランナーがいてもいなくても、バッターの様子って変わるんです。そこで自分が持ってる技術の中でどう攻めたらアウトにできるか。もうとにかく『網の目をくぐるような思いで野球を見なさい』と常に言ってます」
その言葉が示すのは、相手を観察する力、状況を読む力、自分の武器を正しく理解する力。奥深い“技術”こそが、プロの世界で生き抜く鍵と、入来コーチは掲げている。
またDeNAが得意とするデータ集積も「重要な武器」と言い切る。
「データは大切です。データを参考にしながら、どういう風にこのバッターの特徴があって、どういう風に抑えていけばいいのか。これをミックスさせていかないといけない」
1軍で結果を残せなかった選手には、課題をできるだけシンプルに整理し、一つずつ克服させる。その取り組みで花を咲かせた代表例が深沢鳳介だ。4、5月での3先発で0勝1敗と苦しんだが、7月5日に初勝利をマーク。すると、同月18日には初完封と一気に跳ねた。
「深沢は簡単です。真っすぐが通らなかった。真っすぐが1軍のレベルに到達してなかった。だから、そこにフォーカスして2軍での日々を過ごしなさい。それだけです」
求めさせたのは、ストレートの改善のみ。「技術はある」と睨んでいた入来コーチは、課題のストレートを平均球速は2〜3キロ向上に目を向けさせ、1軍で通用するレベルまで引き上げた。その努力が目に見える結果に結びついた。
今季は深沢だけではなく、片山皓心、武田陸玖、庄司陽斗らも1軍で壁にぶつかり、再び横須賀へ戻った。しかし、それは後退ではない。1軍を経験したからこそ、己に何が足りないのかを理解し、課題へ向き合えるステップのひとつである。
「ファームで、いくら『こうなるよ』と言っても最初は分からない。でも、それは必ず上に行った時に直面するので、みんな僕の言うことにしっかり聞く耳を持ってもらってるんだと思います」
課題を向き合う日々の積み重ねが、選手たちが再び1軍で結果を残す土台になっている。













