「やっぱり、もっと評価されないといけない」メガクラブ移籍が実現しなかった現実をどう受け止めるか 佐野海舟が語った己の“現在地”【現地発】
マインツ残留後、佐野が目指しているのは得点に絡む「質」。だからこそ、己の判断に厳しい意見を口にする時もある(C)Getty Images
成長の兆しとなったブラジル戦の会心弾
今もマインツで意識を高く保ちながら、課題克服を実践できているところに佐野の成長度合いが浮かび上がる。
昨季途中の2025年12月に監督就任したウルス・フィッシャーの下、今季も佐野はアンカーとして起用されている。チームの最終ライン手前に生じるスペース管理をたった一人で担っている。ゆえに自分が不用意に前線に攻め上がれば、広大なスペースを空けてしまうリスクがあり、攻撃参加のタイミングを見極めながらプレーが求められる。
無論、容易なタスクではない。だが、佐野は試合を重ねるごとに守備の舵取りだけでなく、ゲーム展開を見極めながら、タイミングよく攻撃に参加する頻度を増やしていっている。
攻撃で絡める頻度が増えてきたことで、その精度の向上に課題があると口にしていたのが、今年3月のフランクフルト戦後だった。
「出ていける時は迫力を持って出ていくこと、最後の質の部分は自分の課題だと思っています。ああいうところで、もう少し攻撃の機会を作れればいいと思います」
その変化をまさしく象徴するのが、北中米ワールドカップのブラジル戦でみせたゴールだった。中盤で巧みな駆け引きから相手のパスをインターセプトすると、佐野はそのまま前へ持ち上がり、最後は思い切ったシュートを名手アリソンの守るゴールへと突き刺したのだった。
ただ、佐野はそれでも満足していない。先述のハンブルク戦では、相手陣内で巧みにボールを奪取してから敵エリア内まで侵入した後、味方への横パスを出した己の選択に納得がいかなかった。
局面的にフリーで持ち込めていただけに筆者が、「自分で打ってもよかったのでは」と尋ねると、佐野は、「そうですね」とうなづきながら、こう答えている。
「打てたと思います。そこは修正するところかなと思います」
自身が欲するゴールを奪うために、どういう選択をするのか。そこを含めて、今の佐野は自分のプレーを見つめている。そんな25歳にとって今夏にメガクラブへの移籍が実現しなかったことは、自分の考え方を律するきっかけだったのかもしれない。ただ、残留と言う結末を受け入れて立ち止まるのではなく、「マインツで何を積み上げれば、さらに評価される選手になれるのか」という方向へ意識を向けている。
「結局、変わらないのは、自分がここでサッカーをすること。なので、そこは変わらずに、日々成長を求めてやり続ければいいかなと思っています」
昨季のブンデスリーガで34試合に出場して1ゴール、3アシストをマークしていた佐野だが、今季は第4節終了時で2アシスト。得点機に絡む意欲は結果にも表れ始めている。
守備のスペシャリストから攻撃的な選手へと単純に変わるわけではない。守備を武器にし、チームバランスを大事にしながら、膠着状態の試合でいかに違いを生み出せる選手になるか。
仮にそれができたなら――。欧州のメガクラブが「獲るか、獲らないかを考えられる選手」ではなく、「獲らないわけにはいかない選手」というステージにたどり着けるはず。佐野にとって今季はステップアップを目指す上で真価を問われる1年となる。
[取材・文: 中野吉之伴 Text by Kichinosuke Nakano]
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