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井上拓真はなぜ勝てたのか 那須川天心に食らった一撃を叱った父からの“本音” 王者はあの時、何を見ていたのか?

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試合中に父である真吾トレーナーから飛んだ檄が拓真をより一層、引き締めた(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext

緊張の糸がほころんだ隙を見逃さなかった“天才”

 またも神童を翻弄した。

 9月27日にトヨタアリーナ東京で行われたボクシングのWBC世界バンタム級タイトルマッチで、王者の井上拓真(大橋)が、同級1位の那須川天心(帝拳)に3-0で判定勝ち。昨年11月に開催された同カードで戴冠して以来、2度目の防衛を果たした。

【動画】井上拓真が突かれた一撃! 那須川天心が拳を突き上げたダウンシーン

 試合開始のゴングが鳴る以前から場内には「天心コール」がこだました。王者はクレバーだった。「本能で自分の思うままにやる」と腹をくくり、果敢に打ちに出る局面もあった那須川に対して、重心を低く保った拓真は、機を見てはジャブやフックを繰り出し、ポイントを確実にもぎ取っていく。その所作はまさに王者。経験と自信に裏打ちされた戦いだった。

 試合をリングサイドで見守った大橋秀行会長が「ほとんど完ぺきだった」と太鼓判を押した一戦。「絶対大丈夫」と意気込んでいた挑戦者を、何よりも求めた結果で返り討ちにした。しかし、流石の試合運びの中で隙を突かれる局面もあった。

 7回、鋭い攻防が終わった直後だった。

 凄まじい読み合いの中で繰り出した互いのパンチが不発に終わった刹那、拓真はニヤッと笑った。自然と出た表情だったが、対峙した“天才”は緊張の糸がほころんだ隙を見逃さなかった。相手が白い歯をのぞかせたタイミングでグッと踏み込んで距離を縮めた那須川は、鋭い左ストレートを相手の顔面にヒット。余裕を見せていた王者がガクッと崩れた。

 ダメージは「なかった」。それでも瞬間的に意識が飛んだ。打った那須川にも「体感として効いていたし、顔も嫌がっていた」と手応えがあった。

 そこまでに築いた優位性、さらに試合の流れが一気に崩れかねない瞬間だった。ただ、このダウンが王者をより冷静にさせた。フラッシュダウンであったため、すぐさま陣営に目を向け、兄・尚弥や父・真吾トレーナーから飛んでくる言葉は聞き入れた拓真は「本当に無理に行かずに、いったん回復」と守戦にスイッチ。ロープを背にしながらも、一気呵成に攻めに出る那須川をいなした。

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