山中慎介が語る井上尚弥の強さ、WBSS準決勝展望

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■すべて10点満点の井上 抜群の距離把握力

――WBSSバンタム級トーナメント準決勝、もうひとつのカードが日本時間の19日(日)、イギリスのグラスゴーで行われます。WBAチャンピオンの井上とIBFチャンピオンのロドリゲスが統一戦で拳を交えます。
山中「事実上の決勝戦ともいわれている注目のカードですね。井上選手はもちろんですが、ロドリゲスもパワーのある実力者なのでレベルの高い試合になるはず。いまから楽しみです」

――その井上選手は昨年10月の準々決勝で元チャンピオンのファン・カルロス・パヤノ(当時34=ドミニカ共和国)を開始から70秒、右一発で失神させています。
山中「1ラウンドKOというと、お客さんからは『もう少し見たかった』という声が出てくるものですが、あの倒しっぷりは会場の観客やテレビで見た人を十分に満足させるものでした。70秒でファンを満足させられる勝ち方というのは衝撃ですよ。相手の動きを数十秒見ただけで、あのワンツーを当てられるんですから。その前(18年5月)のジェイミー・マクドネル(33=イギリス)戦も衝撃的でしたしね」

――井上選手の優れている点はどこなのでしょうか。
山中「スピードやパンチ力などすべての項目が10点満点なんじゃないですかね。特にどのパンチをどこに当てるか、距離感の把握が早いんでしょう。瞬時に距離や当てるポイントをつかむ能力はずば抜けていると思います」

――課題はありますか。
山中「ないでしょう。以前、井上選手は防衛戦のなかでサウスポースタイルで戦ったことがあったけれど、あのままでも倒してしまうだろうと思ったほどですから。あのとき僕は現役だったので、同じサウスポーという点では誰にも負けたくないと思ったのを覚えています」

――山中さんは8回戦時代に3試合連続1ラウンドKO勝ちを記録していますが、1ラウンドKO勝ちのあとは逆に力んでボクシングが雑になるといったことはありませんか。
山中「僕の場合は日本チャンピオンになる前だったので注目されることもありませんでしたからね。だから3試合目も力まずに戦えました。ただ、井上選手の場合はこれだけ注目されていますからね。本人が一番気にしないようにしていると思うけれど、実際に2試合続けて1ラウンドKOしているわけで、無意識のうちに力みとして出る可能性はあると思います」

■評価の高いロドリゲス パワーには要注意

――今回の井上選手の相手、ロドリゲスの試合映像を見て、どんな印象を持ちましたか。
山中「戦力面でも動きでもバランスのとれた強い選手だと思います。パンチが固そうな印象で、パワーもありそうですね。身長は井上選手よりも少し大きいみたいですが(井上が165センチ、ロドリゲスは168センチ)、体つきは井上選手の方がしっかりしている印象を持ちました。井上選手ほどのインパクトではないけれどロドリゲスも評価の高い選手なので、事実上のWBSS決勝戦といわれるのも分かりますね」

――オッズは5対1で井上選手有利と出ています。
山中「けっこう開いているんですね。ふたりの直近の試合(井上は衝撃的な1回KO勝ち、ロドリゲスは苦戦の12回判定勝ち)が影響しているんでしょう。」

――どんな試合展開を予想しますか。
山中「瞬間的にいろんなパンチを出せる井上選手が相手なのでロドリゲスは警戒しながらスタートすると思います。ロドリゲスは右ストレートや左アッパーなどが強く、腕をたたんで近距離で打つのも巧いんですが、その距離になる前に井上選手のパンチが入るような気がします。かといって遠い距離でも井上選手のパンチが当たるイメージなんですよね。井上選手がどういう戦いをするのか、どう勝つのか、圧倒的な勝ち方ができるのか――とにかく井上選手のパフォーマンスに注目ですね」

――試合はイギリスのグラスゴーで行われます。
山中「以前、井上選手はアメリカで戦ったことがありますが、調整に苦労したとは聞いていないので問題ないでしょう。彼はハートも強いし。連続KO勝ちで自信を増しているだろうし、不安よりも楽しみの方が大きいんじゃないですか。いつものコンディションをつくれば気分よく戦えると思いますよ」

――山中さんはWOWOWの現地解説の予定です。
山中「1万3000人前後が入る会場だと聞いていますが、おそらく満員になるでしょう。井上選手はイギリスでも高い評価を受けているので、声援も多いんじゃないですか。ホームのような雰囲気で戦えるかもしれませんね。僕は現地で見たこと、感じたことをストレートに伝えられればと思っています」

――井上選手にエールを。
山中「彼は圧倒的な勝ち方を続けているので、さらに高いものを求められています。常にプレッシャーがかかっていると思いますが、井上選手はそれを力に変えるんじゃないでしょうか。会場の雰囲気や緊張感、WBSS独特の入場とリングインなど、楽しんだうえで良い結果を出して日本を盛り上げてほしいですね」

 「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」バンタム級準決勝、WBA王者の井上尚弥(大橋)対IBF王者エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)は5月19日(日)午前4時30分からWOWOWプライムで生中継する。

[文/構成:ココカラネクスト編集部、取材協力:WOWOW]

山中 慎介(やまなか・しんすけ)

1982年10月11日、滋賀県出身。アマチュアを経験後、06年1月に帝拳ジムからプロデビュー。11年11月、WBC世界バンタム級王座を獲得し、左構えから繰り出す「ゴッドレフト」を主武器に6年間に12度の防衛を果たした。18年3月に引退。戦績は31戦27勝(19KO)2敗2分。

◆◆◆WOWOW番組情報◆◆◆
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・現地解説:山中慎介

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■その他の情報は、WOWOW番組オフィシャルサイトへ!
https://www.wowow.co.jp/sports/excite/

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