トップアスリートに学ぶ「心のマネジメント術」~「自分のため」から「人のために」で得たこと~

タグ: , , , , 2021/11/24

試合の結果は試合までの準備で8割決まる。スポーツ選手にとって1番怖いのは「なんとなく勝てた」こと

塚越 そしてメンタルトレーニングについても話を聞かせてください、日本代表時には、荒木(香織)さんを中心にチームのメントレもありましたね。東京五輪ではどのような取り組みでしたか?

藤田 今回の東京五輪の時も、メンタルコーチがいて、色々話し込みました。まだ僕は波がある選手なので、その波をなくすためにどうしていくかという話をした時に、ミスをすると自分のプレーに影響するところがありました。そこで試合中にミスを引きずらないようにするという部分で僕の中で「ネクスト」というキーワードを持って、ミスした時に自分がその言葉に沿ってミスを切り離し、平常心で次のプレーに臨めるようにしようというメンタルトレーニングを行いました。

塚越 試合中の気持ちの切り替えというところですね。

藤田 ミスを引きずったりとか、それによってどんどん自分で悪くしていっちゃうクセがあったので反省は後にして、一つ切り替えのためのキーワードを作っていました。

塚越 また大きな大会や試合に臨む時に、『準備段階』、『直前』、『試合中』、『試合後』と大きく時期が分けられると思うんですが、この中で藤田さんにとって心のマネジメントが1番重要だと思っていたり、力を入れている時期というのはどこになりますか?

藤田 やっぱり試合前の準備段階です。僕の中では、試合の結果は試合までの準備で8割決まると思っているんですよね。技術的な面、チームワーク的な面も含めて。ただメンタル面もしっかりと準備をして試合に臨めば僕の場合はあまり緊張することなく試合に入れますし、そこが1番重視しているところです。

塚越 話せる範囲でどんな準備をされているか教えていただけますか?

藤田 戦術面に関しては、まず自分が理解し、その上でチーム内での理解を深めていく。試合で一言言えばそれができるといったように完璧にしています。メンタル面でいうと、まずどういうスタジアムで試合をするのか、晴れならばこういうプレー、雨ならばこういうプレーでいこうといったことを考えるなど、色々な想定をしてメンタルを整えていますね。

塚越 イメージトレーニングを、毎日どのくらいやられているんでしょうか?

藤田 決まった時間にやるというよりは寝る前にイメージをしてみたりとか、あとは練習前に戦術をイメージしてみたりといった感じですね。あと、ラグビーの場合、結構形やサインが決まっていても、その選手のキャラクターによって、「もっとこうしたほうがいい」とか「こうして欲しい」といった要望が他の選手から出たりもします。その意味ではその選手やチームにとって1番ベストな状況を考えたり生み出したりすることって、多分グラウンド内外での話し合いの場が1番重要だと思うので、そこは試合前の準備段階でも大切にしてやっていますね。

塚越 事前に理解を深めることが試合当日に、チームやご自身の中でどのように作用されていると感じますか?

藤田 正直、どんなにいい準備をしても、試合になると失敗することもありますし、状況判断で動かないといけないこともあります。ただ、いい準備をしたという自信を持って試合に臨むのと、「あれどうするんだろう」という不安を持ったまま試合に臨むのでは相当違うと思います。それによって、試合時のプレーの精度も上がってくると思うので、そこが1番重要なのかなと思います。

塚越 その試合前の自信というのは、「これだけ準備した」「これだけイメトレした」というところになるんですか?

藤田 それができたからといって、結果が全て良いかと言われたらそうではないですけど、それをして負けるのとしなくて負けるのでは、後悔もあると思います。逆に、『ここまでして負けた』、じゃあ次はどうしたら良いんだろうというステップを踏めるんですけど、もしその準備をしなくて試合に臨んで大敗し、次どうするかとなった時に、試合前の準備がないとステップにならない。そこがすごく大切なのかなと思っています。

塚越 準備などやることをやらないで負けた場合には、プロセスも意味を失うのですごく辛いですよね。

藤田 やることをやらないでもし勝ったとしても、『なんで勝てたんだろう』という理由づけがあまりない。『なんとなく勝てた』というのが競技を行う上では一番怖くて、それが続くと自分のものにならないというか。なので、結果は結果でありつつも、そこまでのプロセスというものがどれだけ大切かというのを僕のラグビー人生の中では重要視しています。
 (次回は今夏の東京五輪に至るまでの藤田氏のマインドセットの方法についてさらに掘り下げます)





[文/構成:ココカラネクスト編集部]

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

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塚越友子(つかこし・ともこ)

過去に自身で仕事中にうつ病を発症した経緯から、働く人のカウンセリングに注目。2008年に東京中央カウンセリングを開業。社会学修士号(社会心理学)教育学修士号(臨床心理学)。公認心理師・臨床心理士・産業カウンセラー。

藤田慶和(ふじた・よしかず)

ラグビースクールの監督をしていた父の勧めで7歳から競技生活をスタート。名門・東福岡高校時代に頭角を現すと全国高校ラグビーで主力として3連覇を果たす。2015年ラグビーW杯ではチーム最年少出場、今夏の東京五輪では7人制ラグビー日本代表として戦った。埼玉パナソニックワイルドナイツ所属。

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