世界最高峰のカットマンを「11連破」 大藤沙月が橋本・佐藤を飲み込む理由 スコピエで示した“カット打ちの完成形”
カットマンの武器は、言うまでもなく「カット」と呼ばれる強烈な後退回転がかかったボールだ。カットボールは相手のラケットに当たると激しく落ちるため、攻撃をするためには通常よりもラケットを激しく振り上げて打つ必要がある。しかし、カットの回転量を見誤ると、振り上げすぎてオーバーミスになるし、振り上げ方が足りないとネットミスをすることになる。かといって、スピードを遅くして安全に行きすぎると、カットマンはそれを見逃さず強烈な反撃を見舞う。それに必要な最低限の攻撃力を身につけているのがカットマンなのだ。
だからカットマンと戦うためには、ぎりぎりカットマンが反撃できないような一定以上の威力のボールを延々とノーミスで打ち続けるという独特の打法が必要となる。こうした対カットマン用の打法を卓球界では“カット打ち”と呼ぶ。
それには、リスクを冒しながら目まぐるしいテンポで打ち合う攻撃選手同士の試合とは別の能力が求められる。カットの回転量を見極める眼力と集中力、全身を使ってラケットを振り上げ続ける筋力と持久力、そして自分の攻撃の威力と成功率を測る正確なリスク管理能力だ。これらの能力において大藤は、大半の中国選手をも凌駕する完成の域に達していると言える。
だからといって、大藤がそれらの中国選手より強いかと言えば、そうとも言えないのが難しいところだ。卓球競技が持つ“回転”という要素が生み出す複雑性と多様性がここにある。あらためてそれを考えさせられた大藤の優勝だった。
[文:伊藤条太(卓球コラムニスト)]
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